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〈同胞法律・生活センターC〉 婚姻全般(1)

 日本が少子高齢社会と言われるようになって久しいこの頃、私たちの暮らしの周辺でもこれを実感するようなさまざまな出来事や問題が目立つようになっています。他方、現代は晩婚化、未婚化の時代とも言われています。この背景には、とりわけ「少子化」問題が単に女性が子どもを産まなくなったことに原因があるのではなく、子を産む親世代の人口(男女を含む)の縮小と子の生み方の変化が大きく影響しているからだと言われています。このうち子の生み方が変化したことの要因が結婚の仕方が変わったこと、すなわち晩婚化、未婚化なのです。

 この「晩婚」「未婚」という言葉。かつては女性にたいしてよく使われ、そこには多少非難めいたニュアンスも含まれていたように思われます。何を隠そう、筆者自身も周囲からさんざん「いつ結婚するの? する気あるの?」などと言われ、そのつど「あんたに何の関係や?」と心の中で思ったものです。ところが最近は、男性も含めて使われます。

センター相談員紹介−黄正基さん(住まいサポート専門相談員)

嫌な思いせず希望の物件を 

 東京・新宿歌舞伎町で不動産業を営んでいます。外国人が非常に多い地域なので、さまざまな国の人たちの住まい探しを手伝うことが多くあります。家主や管理会社と交渉する過程で、外国人への偏見、とりわけコリアンをはじめアジア人、黒人などに対する非常に根深い偏見にぶつかります。その中で数世代を経て日本に暮らす私たち在日同胞に対しても、他の外国人とひと括りにされて同様の偏見を持たれていることが少なくありません。しかし、きちんと説明してあげることで、理解してくれる家主もいます。進学や就職、あるいは結婚などで、東京近郊に住まいを探そうとしている同胞のみなさん、同胞法律・生活センターまでご連絡ください。嫌な思いをせずにスムーズに希望通りの物件が見つかるよう、お手伝いします。

 日本・総務省統計局の国勢調査によると、晩婚化にともなって20〜30代の未婚化率が著しく進んでおり、1970年から2000年の間に、女性20代の未婚率は18%から54%、男性30代前半の未婚率は12%から43%へと、男女ともに3倍以上に上昇しています。この未婚率の上昇は都会になるほど高くなる傾向が見られ、東京都渋谷区の場合、30代前半の未婚率は女性40%、男性は60%を超えるそうです。このような晩婚化、未婚化の傾向は、少子化に直結する問題として、また同時に「非婚化」(生涯結婚しない人の増加)にもつながる社会全体の重要な問題として捉えられています。

 私たち在日同胞も日本社会のこのような現象とは無関係ではないでしょう。親戚や友人など周囲をみても、世代が若くなるにつれて初婚年齢が高くなっていたり、あるいは未婚者数が多くなっていると思います。

 しかしながら私たち在日同胞の場合、女性・男性の婚姻に関連したこのような傾向とは別に、さらに「国際結婚」という問題があります。このいずれの問題もあわせて、在日同胞社会の存続にも関わってくる非常に重要な問題と言えます。

 在日同胞と日本人の結婚は年々増加傾向にあり、いまや同胞同士の婚姻数をはるかに上回るようにもなっています(*厚生労働省『人口動態統計』2004.3によると、同胞同士の婚姻件数は943件で、これに対し同胞と日本人との婚姻件数は7732件、同胞と日本人以外の外国人との婚姻件数は172件となっている)。

 そのため、同胞法律・生活センターにも国際結婚に起因する日本人配偶者やその夫婦間に出生した子どもの国籍に関する相談がたくさん寄せられています。かつてはこのような相談は、両親から猛反対の末に、日本人の妻と生まれてくる子は必ず民族の国籍を取得させるという条件で結婚した夫婦や、その親からのものが圧倒的多数を占めていました。ですからその内容も、日本人配偶者やあるいは生まれた子に民族の国籍を取得させるにはどうすればよいか、日本国籍の離脱手続きに関するものが多かったようです。

 しかし最近では、子が民族の国籍を取得できる道はあるのか(すなわち、日本との重国籍なのかどうかの確認)と、国籍の選択は将来子に委ねるとしても、子に民族の姓を名乗らせることはできるのか、日本国籍になっている子が自分と同じ朝鮮籍を合わせ持っていることは何で証明できるのかというような相談が非常に多くなっています。相談者はもっぱら若い在日3世で、1世や2世とは異なり高い教育水準と多様な価値観、ライフスタイルに裏打ちされ、相談内容にも民族と国籍を分けて捉えようとする傾向が反映されていると言えます

 また他方では、日本人以外の外国人と婚姻する同胞も年々増加傾向にあるようです。中国朝鮮族の同胞と結婚するケースも増えてきているようですが、アメリカ、イギリス、フランス、トルコ、パキスタン、中国などと相手の国籍はさまざまで、まさにその呼び名のとおり国際結婚をする同胞も増えています。そのため相手の本国の法律によっては婚姻の方式も異なり、また宗教上の儀式が必要であったりするなど、婚姻の手続きが非常に複雑になることがあります。それだけでなく相手の日本における在留資格の取得手続きや、生まれてくる子の国籍がどうなるのか、また日本で出産しなかった場合(妻が本国で里帰り出産した場合)子の日本での在留資格や国籍などはどうなるのか…などなど、まだまだ歴史の浅い同胞法律・生活センターですが、ほんの2、3年前には考えられなかった相談が増えており、同胞社会が実に多様化していることを実感しています。

 次回からは、このような同胞の婚姻にまつわる問題を相談事例形式で紹介していきます。(金静寅、NPO法人同胞法律・生活センター事務局長)

 ★連続講座「在日コリアンのための知って得する暮らしの法律・パート2」第3回−使いこなす介護保険

 13日(土)、午後2時〜。ケアーマネージャー、住環境コーディネーターの林瑛純さんが介護保険の制度とその仕組み、実際の利用方法について詳細に解説する。家族の誰かに介護が必要になった時のために、今から備えておくべき知識を身につけるチャンス。

 場所はNPO法人同胞法律・生活センター(東京、台東)、参加希望者は事前に連絡を。

 NPO法人同胞法律・生活センター TEL 03・5818・5424、FAX 03・5818・5429

[朝鮮新報 2004.11.9]