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〈同胞法律・生活センターE〉 婚姻全般(3)

 Q1 朝鮮籍同士のカップルです。婚姻届を出しに市役所に行きましたが、係りの人に「戸籍謄本あるいは婚姻要件具備証明書を提出してください」と言われています。朝鮮籍なので戸籍はありませんし、どうすればよいでしょうか?

 A1 このような相談は、今でも少なくありません。4世、5世が誕生している現在でも、在日同胞の婚姻届をすんなり受理しない役所があります。係りの人の不勉強であるのはまちがいなく、彼女・彼ら自身が「在日」そのものの存在を知らずに育っているのです。 

 説明するまでもなく、戸籍はかつての日本植民地支配時代に導入されたもので、現在では日本、韓国、台湾に固有の制度です。在日同胞の中には「朝鮮表示」であれ「韓国表示」であれ、本籍地に戸籍を持たない人が多く、そのため戸籍を求めること自体が無理な話です。

 前回の本蘭でも説明したとおり、婚姻届の提出の際、戸籍謄本や婚姻要件具備証明書が求められるのは、@婚姻年齢に達しているか、A重婚ではないか、B性別など、婚姻成立の要件を、本国法上当事者が具備しているかどうかを形式的に審査するためです。ですから、これらの婚姻成立の要件を具備していることを明らかにすれば、婚姻届は受理されます。相談者は、「本国法上、婚姻要件に障害がない」旨の「申述書」を作成して提出すれば、それで婚姻届は受理されます(※役所によっては「申述書」の様式が備置されていることもあるので、係りの人に確認してください)。

 これについては、「昭和30年2月9日付民事局長通達」(民事甲第245号通達)が出されています。今後もこの相談事例のように、婚姻届の提出に際し戸籍謄本等を求められるようなことがあれば、この民事局長通達があることを係りの人に伝えてください。市区町村役場の係りの人がそれでも理解を示さないようであれば、同胞法律・生活センターにご連絡ください。センター事務局から直接係りの人に説明することも可能なのです。

 Q2 同胞同士のカップルです。待望の子が生まれ、早速『Q』という漢字を用いて命名し、出生届を提出したところ、「人名漢字の範囲にはない漢字が含まれているのでこのままでは出生届を受理できません。別の漢字に変えてください」と言われました。よくよく考えて付けた名前なのでその漢字でないと困ります。かと言って、出生届が出せないのも困るし…変更せざるをえないのでしょうか?

 A2 変更する必要はありません。人名漢字の範囲外の難しい漢字で出生届を出すことはできます。

 日本人の場合、名前に用いる漢字は常用漢字や人名用漢字の範囲内のものに限られています。この人名用漢字とは、社会生活を営む上で、複雑、難解な漢字は本人はもとより関係者にも不便や支障を生じさせるため制限すべきだとして、常用漢字のほかに定められているものです。

センター相談員紹介−古川健三さん(弁護士)

 センターの開設当初より相談員をしています。

 在日の方の相談に接してみて思うのは、在日の方の場合、非常に狭いコミュニティー内でのトラブルが少なくないので、その意味での難しさがあると思います。

 日本人の相談との違いという点では、日本社会の根強い職業差別などにより、在日の方の職種が限定されているため、それに伴う特殊なトラブルが多いようです。また、昨今のマスコミによる過剰な「北朝鮮バッシング」により、在日の経済的・社会的に弱い立場にある方々が打撃を受けておられることに、大変心が痛みます。

 新聞でも報道されたのでご存じの方も多いでしょうが、今年の秋にはその範囲がかなり拡大され、名前に用いることのできる漢字が488字増えました。また、削除された漢字もあります。

 しかしながら外国人の場合はこの限りではありません。とりわけ朝鮮半島や中国・台湾などのように、本国法上姓名を漢字で表記するような場合、日本人に対しては適用される常用漢字や人名用漢字の範囲などは関係ありません(1981年法務省民時局通達第5537号)。ですから、在日同胞の場合、この範囲外の難しい漢字を使った名まえでも出生届は受理されます。

 やはり市区町村役場の係りの人の不勉強で、この相談のようにすんなりと出生届を受理してくれない場合は、このような通達があることをきちんと伝えてください。

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[朝鮮新報 2004.11.30]