〈朝鮮国籍取得、日本国籍離脱問題〉 「未承認国」理由に拒否の日本政府に対し日弁連、受理を勧告 |
日本国籍を有していた在日同胞10人が1998年7月、朝鮮民主主義人民共和国の国籍を取得し、その後、日本政府に国籍離脱届を提出したものの、受理しない扱いをしているとして人権救済を申し立てた。これを受けた日本弁護士連合会(本林徹会長)は昨年12月25日、日本国法務大臣に日本国籍喪失届を受理するよう勧告した。日本国籍離脱の自由は日本国憲法が保障している「基本的人権」であり、国際的にも国籍離脱の自由は認められているが、日本政府は朝鮮が「未承認国」であることを理由にこれを拒否している。人権救済を申し立てた同胞らは「精神的負担が大きく、生活上の不都合も多い」とし、一日も早い日本国籍離脱届の受理を希望している。 10人が人権救済求める 人権救済を申し立てたのは、朝鮮人の父と日本人の母との間で非嫡出子として出生し、日本国籍を有していた16歳から55歳までの男性10人。いずれも本人の意思で、朝鮮政府に入籍を請願。98年7月、「入籍通知証明書」の発給を受けている事実を知り、日本政府に国籍離脱届を提出した。 日本国憲法第11条第1項によると、「日本国民は、自己の志望によって外国の国籍を取得したときは、日本の国籍を失う」と規定。また第22条第2項では「国籍離脱の自由」を保障している。 さらに国籍法低触条約(1930年)、世界人権宣言(48年12月10日の国連総会決議)など、国際的にも国籍離脱の自由は認められている。 平壌宣言にも違反 日本国憲法、国際慣習法などがこうであるにもかかわらず、日本政府は朝鮮が「未承認国」であるとの理由で、国籍離脱届を受理しようとしない。また、朝鮮国籍は日本の国籍法上の「外国の国籍」でないとしている。 法務省はその理由について、@未承認国家の発行する帰化証等では当該国官憲が発行したものであるかどうかが確認できず、外国の国籍を取得したことを認定できないA未承認国家の帰化証明書などを正式な公文書として認めることは、国家を承認したのと同じ結果となるため、国の外交政策と行政事務との間に矛盾が生じるおそれもある―ことを上げている。 しかし、日本政府は、未承認国である台湾の地方法院公証人が作成した婚姻証書、離婚証書、養子縁組証書を公式な公文書として認め、受理している。 その一方で、朝鮮が外交関係を結んでいる国は2002年12月現在、152カ国にものぼっている。また、朝鮮は国連にも加盟している。 さらに、日本政府は02年の朝・日平壌宣言を通じて、「国交正常化を早期に実現させるため、あらゆる努力」を注ぐとし、その実現の過程においても、「日朝間に存在する諸問題に誠意をもって取り組む決意を表明」している。日弁連の勧告は、日本国の未承認国である朝鮮国籍が、国籍法の「外国の国籍」に該当するようにその解釈を変更し、日本国籍喪失届を受理するよう求めている。 人権救済申立者のコメント 日本政府はわれわれの日本国籍の離脱を認め、朝鮮国籍取得者として日本で堂々と生きていけるよう保障すべきだ。これは当然の権利でもある。 人権救済を申し立てた者は全員、男性だ。子どもには自分の国の国籍を取得させ、民族教育を受けさせたいという気持ちでいっぱいだ。しかし、日本国籍を離脱できないことから、子どもには妻の国籍を取得させている。外国人登録を携帯するようになれば、本名は「李」なのに、登録上は「金」になることもありえる。一日も早く、日本政府は人道的立場からこの問題を解決すべきだ。 そもそも、日本は朝鮮と国交がないことを理由に、離脱届を拒否しているが、それは日本が朝鮮に対して犯した過去を清算していないからだ。その一方で、朝鮮は国連にも加盟し、世界的にも国家として認められている国だ。国交がなくても、こうした事実も踏まえて、日本政府はわれわれの日本国籍の離脱を認めるべきだ。(関東在住、40代)(羅基哲記者) [朝鮮新報 2004.1.20] |