そこが知りたいQ&A−総連中央元財政局長への判決、なぜ不当なのか |
Q 康永官総連中央元財政局長に対する判決が不当だと言われているが、その根拠は? A 東京地方裁判所は3月26日、康元局長に対し懲役6年の判決を言い渡した。 検察当局は2001年11月、朝銀東京信用組合本店営業部に開設された仮名口座預金に係わる「業務上横領容疑」で康元局長を逮捕した。康元局長が朝銀の幹部と共謀して朝銀の預金を「横領」したというのだ。 今回の事件のカギを握る「横領金」の入出金問題について検察側は、仮名口座を通じて行われたと主張した。仮名口座を康元局長が管理していたか否かが争点になった。 しかし2年間の公判で、この仮名口座は当時の朝銀東京側が開設、管理していたもので、康元局長は当初からこの口座の存在すら知らなかったということが明白になっている。弁護側証人はもとより検察側証人でさえ、事件と康元局長がまったく無関係であると証言した。 とくに検察側証人は、次々と捜査段階の供述をひるがえし、捜査段階で虚偽供述をした経緯について詳細に証言。朝銀と康元局長とが「共謀」した事実はないこと、横領行為に使用された口座と康元局長とはまったく関係のないことを認めた。にもかかわらず有罪判決を下したことは、検察側証人の証言までも否定する、矛盾したものとなっている。 明らかに公訴事実を裏付ける証拠はない。それなのに有罪判決を下したことは、まったくの違憲、違法と言える。 Q なぜ違憲、違法と言えるのか。 A 日本国憲法は、適正手続きを遵守することを要求しているし、刑事訴訟法は「事実の認定は証拠による」(第317条)としながら、証拠裁判主義を定めている。これは近代国家の裁判で遵守されるべき共通の原理となっている。 とくに刑事訴訟の場合、公判で本人が罪を認めた場合でも、証拠調査を省略すべきではないとされている。すなわち、司法機関である裁判所は政治的、恣意的な判断を排除し、証拠に基づいて判決を下さなければならない。 この証拠主義裁判によると、「康元局長の無罪はあまりにも明らか」(弁護団談話)である。にもかかわらず裁判所は今回、公判の中で虚偽であることが明らかになった関係者の捜査段階での供述に依拠する形で、検察側の不当な公訴提起に迎合し、有罪判決を下した。だから明らかに違憲、違法なのだ。 判決直後、東京地方裁判所司法記者クラブで記者会見した弁護団は、「最初に有罪ありきの不当な裁判」(渡辺博弁護士)「捜査当局の矛盾が多い。このようなことが続くなら裁判の意味がない」(吉峯啓晴弁護士)と指摘している。 Q 今回の判決の背景には何かあるのか A 日本当局による反共和国、反総連政策によるものだと言える。 3月26日午後、東京都千代田区の朝鮮会館で記者会見しだ令鉉副議長は、「意図的な政治的判決」「朝鮮総連に対する日本当局の政治的弾圧を正当化しようとするもの」だと指摘している。また、弁護団も「背後に朝鮮と総連に対する悪意があると見られる」と話している。 Q 今後の対応は? A 弁護団は、不当判決が下された直後に、東京高裁に控訴した。控訴審で無罪を明らかにするという。 一方、゙令鉉副議長も、「今後とも、今回の判決の不当性を徹底して追及し、無罪釈放を勝ち取るまで断固たたかう」と表明した。 康元局長の拘留は、重大な人権問題にもなっている。 重い病を患っている康元局長に対し、弁護団側は15回にわたり保釈請求をしたが、検察当局は「罪証隠滅」「逃亡のおそれ」を口実に反対し、司法当局も検察側のこのような要求を受け入れ、保釈を認めていないでいる。 一般的に刑事裁判における被告人は、検察側申請の証人尋問を含む主な証拠調べが終われば保釈が認められるのが通例。しかし、康元局長は手術が必要にもかかわらず引き続き拘留されている。在日本朝鮮人人権協会によるとこれは、「異例かつ異常な態度」であり、「日本国憲法、刑事訴訟法、国際人権規約に照らしても不当きわまりない」という。 弁護団は裁判所に対し、ただちに保釈決定することを求めた。(姜イルク記者) [朝鮮新報 2004.4.1] |