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司法試験1次試験、朝大出身者も免除へ

 来年度から朝鮮大学校(東京都小平市)出身者にも、司法試験1次試験が免除される。司法試験の実施主体である法務省司法試験委員会(上谷清委員長)が4月23日、これまで免除してこなかった学校教育法上の「大学」でない朝大出身者、小学校から大学までを15年以下で終えるフランスのソルボンヌ大学など一部の外国の大学出身者に対する差別を撤廃する方針を固め、「1次試験免除に関する規則」の改正案をまとめた。(文聖姫記者)

米大日本校は免除

司法試験委員会に要請書を提出する人権協会代表

 現行の司法試験法第4条によれば、1次試験が免除されるのは「学校教育法に定める大学において学士の学位を得るのに必要な一般教養科目の学習を終わった者」。法律の専門知識を問う2次試験とは異なり、1次試験は一般教養試験だからだ。しかし、朝大出身者は1次試験を免除されない差別を受けてきた。同大が学校教育法上の「大学」でないことがその理由。そのため同大法律学科学生は、日本の大学の法学部通信課程に2年以上通い必要な単位を取得するか、日本の大学院研究科を受験しその合格証書をもって1次試験を免除されてきたが、精神的、経済的負担は少なくない。

 一方、「司法試験第1次試験を免除される者に関する規則」では、水産大学校、海上保安大学校、気象大学校卒業生の1次試験免除が規定されているが、これらは朝大と同じく「1条校」ではない。同規則では、「外国において、16年の課程を修了した者」も対象者で、海外の大学を卒業した者にも広く1次試験免除措置が講じられている。

 さらに、朝大と同じく日本にある米国のテンプル大学日本校の卒業生に対しても1次試験を免除している。

同等の学力有する

 こうしたことから、朝大側では、「(日本の)大学を卒業した者と同等の学力がある」と認められている同大生のみ1次試験免除対象からはずすのは合理性に反するとして、昨年7月15日、呉圭祥教務部長名で司法試験管理委員会(当時)に要望書を提出した。

 実際、同大卒業生に対しては、すでに1978年から公私立大学大学院への受験資格が認められてきたし、99年からは国立大学大学院への受験資格が認められている。国立大学だけを見ても東大、京大、学芸大、大阪大など13大学、19人の合格者が出ている。これは「日本の大学と同等の学力がある者」として認められていることの紛れもない証明だ。

 要望書ではこうした事実を踏まえ、「人権擁護、機会均等の観点からも、速やかに改善されるもの」と期待を表明していた。

 さらに、在日本朝鮮人人権協会も2月20日に司法試験委員会に要望書を提出し、@「第1次試験を免除される者に関する規則」第1条に「主に外国語により高等教育に相当する課程の教育を施す教育施設において2年以上在学し、32単位に相当する課程を修了した者」という条項を加え、朝大生をそれに該当させるA仮に、上記要望の措置をすぐに講じることが困難な場合は、少なくとも同規則の「外国において、学校教育における16年の課程を修了した者」を広く解釈して、朝大生を免除の対象とする−よう求めていた。

今後は3年時からも

 今回まとまった改正案では、「免除に関する規則」に「個別審査により学校教育法上の大学卒業者と同じ学力があり、受験する年の3月末で22歳の者も免除」との条項を追加し、朝大卒や一部外国の大卒者も免除する。要望のAの部分が通った形だ。

 人権協会の金東鶴部長は、「完全ではないにしろ、われわれの要求が受け入れられたという点では一歩前進といえる。まだ未解決の公認会計士、税理士、保育士、社会保険労務士など、他の国家資格試験の受験における差別是正にも道を開くきっかけになると思う」と述べる。

 この問題に関ってきた洪正秀弁護士(人権協会副会長)は、「朝大が水産大学校や海上保安大学校と同等だと認められたことは前進だ。しかも、法務省の外局である司法試験委員会が認めた意義は大きい。ダブルスクールなどの負担がなくなり、朝大生も受験しやすくなる。今後は、日本の大学生と同じく3年時からも受験できるようにすべきだ」と今回の方針に一定の評価をしながらも、法務省や文科省等が今後も差別是正のためにいっそう努力すべきだとした。

 呉圭祥教授(教務部長)は、「一歩前進だと思う。関係者に感謝申し上げたい。本校は今後も同胞社会、そして日本と国際社会に存分に対応できる教育システムをいっそう整えていくつもりだ」と語っている。

[朝鮮新報 2004.5.11]