〈同胞無年金高齢者、障害者問題〉 与党救済案、在日外国人は除外 |
年金をもらえないまま放置されている在日の同胞たちがいる。日本人と同じく法律を守り、税金を納めてきたにもかかわらずだ。しかも、彼、彼女らは日本の植民地支配によって誰よりも苦痛を強いられてきた。現在、同胞の無年金高齢者は約8万人、無年金障害者は5000人に上る。本人はもちろん、家族らも苦しい生活を強いられている。無念を晴らすこともできず、亡くなっていった人はさらに多い。 緊急支援の自治体も 日本の国民年金制度が創設されたのは1959年。国籍条項が設けられ、在日外国人は排除された。 日本政府がその重い腰をやっと上げた時には、すでに20年以上が経っていた。 82年、日本政府が難民条約を批准したのに伴い、年金法が改正され、国籍条項が取り払われた。 しかし、「1982年1月1日時点で20歳以上のすでに障害を有する者」はまたも放置された。 さらに、「1986年4月1日時点で60歳以上の者」も取り残された。国籍要件によって加入できなかった期間の算入が86年に認められたが、60歳未満の永住許可者のみに限られた。 年金制度が発足した当時、同じ状態にあった日本国籍者、小笠原や沖縄の人、「中国残留邦人」には経過措置がとられていた。 国籍要件が撤廃された今、日本政府が在日外国人の無年金者を差別する「理由」はどこにもない。 京都府など、700以上の自治体では、生活苦に悩む在日外国人に対して緊急支援を行っている。だが、あくまで「国が制度化を図るまでの過渡的措置」であって、財政難も伴い低額だ。「日本政府が行うのが筋」と支援を拒む人もいるという。 国際人権規約に違反 「年金の国籍条項を完全撤廃させる全国連絡会」をはじめ多くの支援者らは、署名活動や講演会などを通じて救済措置を講じることを訴えてきた。 2000年3月には、無年金障害者の在日同胞ら7人が、障害基礎年金の不支給決定の取り消しを求め訴訟を起こした。 しかし、03年8月、京都地裁は「国籍条項は立法の裁量範囲内」として原告の訴えを退けた。 判決で京都地方裁判所第3民事部の八木良一裁判長は、「在留外国人を支給対象から除外して自国民を優先的に扱うことには合理性がある」とした。 さらに、「無年金状態の在日外国人に対して救済措置を講じることが望ましい」としながらも、それがなかったことが合理性を欠くとはいえないとした。 判決は、差別していることが問題だという観点自体が欠けていた。年金制度の発足時に在日外国人を排除したこと、国籍条項を撤廃した後、在日外国人に対して日本人と同じ経過措置を講じなかったことが問題なのだ。年金問題に関して国籍の違いで差を設けることは何ら合理性を持たず、ただの差別にすぎない。 また、判決は国際人権規約A規約2条を誤って解釈している。 同規約2条2項が「即時差別撤廃」を謳っているのは、世界的な通説となっている。にもかかわらず、判決は「2項は個人に対し即時に具体的権利を付与すべきことを定めたものではない」としている。 日弁連も1996年2月、「国際人権規約に反し、日本国憲法にも抵触するおそれがある」として、菅直人厚生大臣(当時)に国民年金法の改正を求める要望書を提出。「外国人という理由で差別することは許されない」と指摘していた。 原告側は判決を不服として、2003年9月、大阪高裁に控訴した。 苦しい生活強いられ 日本人の中にも、無年金状態の障害者は存在する。20歳を過ぎた学生で国民年金に任意加入していなかったり、サラリーマンの妻で国民年金に加入していなかった人などだ。 学生無年金障害者らが起こした裁判では、東京地裁は「立法不作為」を認め、国に賠償を命じた。 自民、公明の両党は無年金障害者の救済のための与党案を6月、国会に提出。秋に成立の見通しだが、在日外国人は対象外で、金額も低かった(民主党案は無年金障害者全員に障害基礎年金と同額支給)。 年金未払いの政治家が提出する法案と対応に、当事者たちの怒りは頂点に達している。 無年金の在日外国人障害者の大半を占めるのは在日朝鮮人。日本が植民地支配した歴史、過去の謝罪と清算を果たさない現状を考慮すれば、誰よりも先に保護されなければならない。 在日外国人障害者年金訴訟の原告団長、金洙榮さんは、第1回口頭弁論(5月28日)の意見陳述で、「(国籍と障害の)二重の差別によって年金ももらえず、苦しい生活を強いられている」「誠意ある裁判を」と、手話を交えながら訴えた。 在日外国人「障害者」年金訴訟を支える会事務局の鄭明愛さんは「正当な根拠なく無年金のまま放置され、仕事にもつけず、家庭でも肩身の狭い思いをしながら生きている」と、当事者の苦しみを代弁した。 支える会をはじめとする原告の支援者らは、在日無年金障害者の実態調査を行っている。今後、四天王寺国際仏教大学大学院の愼英弘教授を学者証人として迎え、10月1日に大阪高裁で行われる予定の第3回口頭弁論で、調査結果を陳述する予定だ。(李泰鎬記者) [朝鮮新報 2004.8.18] |