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〈インタビュー〉 キム・ヨンゴル朝鮮人強制連行被害者、遺族協会会長

 【平壌発=金志永記者】日本の過去の清算を求めて活動する朝鮮人強制連行被害者、遺族協会のキム・ヨンゴル会長(79)に2月末、協会の活動計画について聞いた。昨年11月に発足した同協会は、日本が植民地支配時代に犯した人権犯罪の被害者と遺族らによって作られた。キム会長自身も1944年に「徴兵」で日本に連行され、鹿児島の軍用飛行場で防御施設などの建設に動員された。キム会長は、協会は日本政府から強制連行犯罪に対する謝罪と補償を受けるまでたたかうと述べながら、「アジアで新しい秩序を築くためには20世紀の不幸な過去が清算されなければならない」と語気を強めた。

対日憎悪深めた裏切り

 ―被害当事者の団体が作られた経緯は。

 昨年11月6日に結成した。日本が戦争に負けて半世紀が過ぎたのに、当時多くの人権犯罪を犯した日本は、謝罪はおろか補償に対する何の対策も立てていない。被害者はこうした日本の態度に怒りを禁じえないでいる。当時連行された多くの人々が、日本に対する恨みを抱きながらこの世を去っている。私たちは日本が謝罪するまでは死ぬに死ねない。

 被害者や遺族は、朝・日平壌宣言を通じて日本が過去の罪について謝罪し補償するという立場を表明したものと思っていた。しかし日本は宣言発表後、かえって反朝鮮策動を繰り広げたばかりか、植民地支配時代の犯罪をためらうことなく美化した。日本の裏切りは朝鮮人民、とくに私たちのような被害者や遺族たちの対日憎悪心を増幅させている。

 こうしたなか、強制連行被害者42万7129人の名簿が新たに発掘、公開された。それに勇気づけられ結成を決意した。私たちの活動は、日本に対する朝鮮人民の積もりに積もった恨みの爆発だ。

 ―今後どのような活動をするのか。

 結成後、被害者や遺族から多くの手紙や電話をもらった。私たちを直接訪ねてきて、過去の被害体験を話す人もいた。

 協会では、被害資料を収集して政府や当該機関に提出する一方、日本の犯罪を告発する場を作っていく。

 とくに、今後は対外的な活動に力を注いでいく。国連をはじめとする国際舞台で、被害者たちが日本の謝罪と補償を促す活動を構想しており、すでに準備にも着手している。

「経済協力」だけでは駄目

 ―強制連行と関連し、日本は「証拠がない」と言いながら、被害者の補償請求の権利を無視しているが。

 被害者は自ら日本に行ったのではなく、「国家総動員法」など人員確保のために作られた日本の法律によって連行された。日本政府はこの責任から逃れることはできない。

 今回42万7129人の名簿が公開されたことで、強制連行が厳然たる事実であったということが明らかになったのだから、日本は被害者の生死の確認からでもするべきではないのか。

 朝・日平壌宣言で日本は、過去の植民地支配について謝罪の意を表明した。私たちは朝鮮人民に与えた人的、精神的、物的被害などすべてのことに対する謝罪が含まれていると思っていた。

 「平壌宣言では補償問題に関しては『経済協力』の文言があるだけで、個人の補償請求の権利は明示されていない」と言うのは詭弁だ。重大な人権犯罪に対する補償を、国家間の経済協力に置き換えることはできない。

 ―平壌宣言発表後、日本では拉致問題がクローズアップされ、加害者と被害者が逆になった論理がまかり通っている。

 拉致問題は政府間では解決済みで、家族の帰国に関する実務的な処理だけが残っていると聞いている。この問題を肥大化させるということは、政治的目的があるのではないか。

 対朝鮮敵視感情を煽る右傾化の傾向は、日本の軍国化と切り離して考えることはできない。最近の「外為法」改悪はそれを如実に物語っている。

 米国が核問題を口実に対朝鮮圧殺政策を強行しようとするのと時を同じくして、日本はこれに便乗し漁夫の利を得ようとしているのだ。日本の反動勢力は本当にこうかつだ。

 日本は加害者としての歴史を忘れ、軍国化への道を再び歩もうとしている。平壌宣言の履行こそ、これを止めるきっかけになるということを日本の国民は知るべきだ。

朝鮮にも「国民感情」

 ―民間団体として、政府間交渉に何を期待するか。

 私たちにも「国民感情」はある。日本は国家レベルでの補償だけでなく、朝鮮人民が納得できるような謝罪と補償をするべきだ。

 政府会談なので、民間団体は直接関与できないが、人権犯罪に関しては私たちの主張を政府に提起する。

 今後、政府間で国家レベルでの補償問題が討議されるだろうが、個人レベルの人権犯罪に対する謝罪と補償はこれとは別だ。その実現のためにも最後までたたかう。

[朝鮮新報 2004.3.4]