米国のイラク人虐待問題、北南のメディア強く非難 |
イラク人収容者に対する米軍の虐待問題が表面化してから、北南朝鮮で米国に対する非難の声が高まっている。北のメディアは、「人権のためにも国権を守るべきであり、そのためには侵略に対処する強力な抑止力を持たなければならない」、南のそれは「ブッシュ政権に人権と民主主義を語る資格があるのか」などという論調が特徴的だ。南の市民団体からは、イラクへの追加派兵反対の声も上がっている。北南メディアの論調をまとめた。
「世界最大の人権侵害国」 朝鮮のメディアはいっせいに米国による国家的な人権侵害行為だと非難した。 労働新聞11日付は論評で、イラク人収容者に対する米軍の人権侵害行為は厳しい審判を受けるべきだと強調したうえで、人々を獣のように扱う米国こそ「ジュネーブ条約」などの国際法を違反し、人類普遍の倫理と文化的常識に反する行為に明け暮れる世界最大の人権侵害国であることを世界の面前に再度余すところなくさらけ出している」と指摘した。 また、「米国のイラク侵攻がなかったなら、捕虜虐待のような最悪の人権侵害行為もなかったはずであり、イラク人民が決死の闘争で自国を固守したなら、こんにちのような恥と悲劇は強要されなかったであろう」としながら、「イラク事態は、人権のためにも国権を守るべきであり、そのためには侵略に対処する強力な抑止力を持たなければならないという朝鮮の軍隊と人民の決心をいっそうゆるぎないものとしている」と指摘した。 さらに、「人権を尊重する国と勢力は、力を合わせて米国と西側の偽善的な『人権騒動』に正義の人権攻勢で立ち向かうべきである」と指摘した。 一方、民主朝鮮11日付は署名入りの論評で、「こんにちの世界に米国のブッシュ政権のような極悪な人権犯罪者の群れが存在すること自体が人類のもっとも大きな悲劇だと言わざるをえない」と強く非難。続いて、「正義を愛し、人権を尊重する世界の進歩的な良心は力を合わせて二度と今回のような極悪な重大人権侵害蛮行が繰り返されないようにその犯罪集団を断固と糾弾すべきである。そして、米国の重大人権侵害犯罪に背を向けたがる米国の歩調に合わせて、反米、自主的な国々に言いがかりをつける勢力も絶対に黙過してはならない」と呼びかけた。 保守新聞もいっせいに非難 一方、南の主要各紙も社説を掲載し、「ブッシュ政権はこれでも人権と民主主義について語ることができるのか疑問」(ハンギョレ新聞6日付)、「今回の事態は、米国の一方主義的なごう慢がどの域にまで達しているのかを示している」(ソウル新聞7日付)などと、米軍の犯罪行為を強く非難している。 また、保守系で知られている朝鮮日報3日付は、「イラク人虐待は戦争犯罪だ」と非難、中央日報4日付も、「虐待はジュネーブ条約違反ばかりでなく、人間性を抹殺する人類に対する挑戦だ。国際社会とイラク人に対する謝罪策を出すべき」と指摘している。また、東亜日報3日付も、「他国の人権状況を調査して毎年報告書を発表し、改善を促しているのが米国だ。米国は自らが犯した人権蹂躙は黙認しながら、他国の人権問題を追及するのか、世界が注目している」とし、真相究明と関係者の処罰を促した。 また、市民団体も次々と集会を開いて米軍の行為を非難している。 7日、ソウルの米国大使館前で開かれた「反米反戦平和守護第23回金曜集会」には、南北共同宣言実践連帯、在韓米軍撤退運動本部などのメンバーが参加。演説したリ・チョンジェ・ソウル連合議長は、「イラクばかりでなく、紛争地域のいたるところで行われている米軍の虐殺と蛮行は、新たな事実ではなく、米国の侵略的本性によるもの」「国、地域ごとに歴史、伝統、民族性が異なるのに米国は自らの基準を一方的に適用しながら犯罪を重ねている」と非難した。また、国民大学の学生は、「米国は平和と人権よう護のためだとしながら韓国軍のイラク派兵を強要しているが、イラクでの蛮行を通じてもそれがうそであることが明白になった」と指摘し、イラク派兵を阻止しようと呼びかけた。 12日には韓国女性団体連合など6つの女性団体が米大使館の前で記者会見を開き、イラク人に対する暴行を「戦時の性暴力犯罪」だと非難、戦争の即時中断と南朝鮮軍の派兵撤回を求めた。 イラクへの追加派兵問題は、6月からスタートする国会での最大の争点のひとつになるとされているが、波紋が広がるイラク人虐待問題が影響を及ぼすと見られる。(姜イルク記者) [朝鮮新報 2004.5.17] |