西海上での「北警備艇侵犯事件」、南の政府合同調査団、ねつ造劇確認 |
南軍当局が7月14日に発表した、朝鮮西海での北警備艇による「侵犯事件」。その後、南政府の合同調査団の調査により、南の軍部によるねつ造であることが判明した。その責任を取って曹永吉国防部長官が7月27日辞任し、尹光雄国防補佐官が新国防長官に就任した。今回の事件は、「北南軍事会談を通じた軍事的緊張緩和措置に全面的に反するものであり、外部勢力によって引かれた『北方限界線』(NLL)に固執しながら北南対決の姿勢をとろうとする目的から出発したもの」(朝鮮人民軍海軍司令部の声明、7月16日)だ。 軍の発表はウソ
虚偽報告事件を調査してきた南政府合同調査団のパク・チョンジョ団長は23日、「海軍作戦司令官は上部への報告をせず、情報融合処長は任意で関連情報を削除した。合同参謀本部情報系統の一部中間幹部らの怠慢な勤務態勢がエスカレートした結果」とその経緯について説明した。 今回の調査により明らかになったのは、まず北の警備艇が軍事会談の合意に沿って南に「漢拏山」という呼びかけを8回にわたって行ったということ。次に、南側の警告発砲の前にも「応答」していたということだ。 これにより、南の軍部が当初「北からの応答がなかった」と発表し、その後「やり取りはあったが正常な交信規則にのっとったものではなかった」と訂正はしたものの、そのいずれもがウソであったことが明らかになった。 南の軍部はこうした事実が明らかになったにもかかわらず、「北との正常な交信はできたが、虚偽の内容だったため無視した」と言い張り、さらには北側が中国の漁船を偽ってNLLを侵犯するという「欺まん戦術」を使った、と発表した。 しかし、これについても合同調査団は、「漢拏山−白頭山など南北間で合意した呼び出し名を使用しており、中国の漁船が付近にいたことも事実であることから、これを『欺まん戦術』と見るのは難しい」と指摘した。 一方、こうした軍の動きに同調して、保守勢力が大勢を占めるハンナラ党は北に対する強硬策を復活させつつある。 同党は軍の虚偽報告をそのまま事実と認め、NLLを「侵犯した北の警備艇に対し適切な対応をし、国家安保を守った点を評価すべきだ」と強弁している。とくに、軍の対応体系は根本的に正当かつ適切であり、政府は軍の報告体系を問題視し責任を問うのではなく、南北間のホットラインを使って「ウソをついた」北に断固抗議すべきだと主張している。 これに対し、北の祖国平和統一委員会や労働新聞は、「ハンナラ党の悪習はいつまでも変わらない」(同紙22日付)と同党を厳しく非難した。 合意なきNLL そもそも今回、北の警備艇が「侵犯」したとされているNLL自体、北南間、あるいは朝米間で合意されたものではない。 NLLは53年8月30日、停戦協定に反対していた李承晩政権による単独北進を防ぐため、国連司令部が一方的に引いたものだ。 現在、西海上には99年7月21日の板門店朝米軍部将官級会談で、朝鮮人民軍が米軍に新たに提案した海上境界線と、00年3月に発表した5島通行秩序(北側の実務接触の開催提案に米軍も南朝鮮軍も応じなかったため、北が仕方なく同年9月に発表、設定)、そして南が設定したNLL、NLLから4.5マイル南下した地点の漁業阻止線、さらにそこから1.5〜2マイル南下した漁場周辺に設定された漁業統制線などがある。しかし、これらのラインも、北南間で合意されたものは一つもない。 西海ではこれまで、ワタリガニ漁のシーズンにたびたび北南間で衝突が起きた。しかし、NLLをめぐる北南間の主張は平行線をたどったままである。 今年、6月に北南間で行われた軍事将官級会談を通じ、軍事境界線付近での宣伝活動の中止や、西海上での偶発的な衝突を防ぐための措置など、軍事的緊張を緩和するためのさまざまな合意がなされた。 にもかかわらず今回のような事態が生じたのは、これを機に北南関係を6.15以前に逆戻りさせようという反統一勢力による「巻き返し」企図にある。 反統一勢力とのたたかいをどのように推し進めていくのか、そこに今後の北南関係がかかっていると言っても過言ではない。(李松鶴記者) [朝鮮新報 2004.7.31] |