top_rogo.gif (16396 bytes)

「脱北者」の「企画亡命」、南のジャーナリストが実情暴く

 昨年3月、中国・広東省広州の外国領事館に「脱北者」を駆け込ませる計画に加担し、中国当局に逮捕されたオ・ヨンピル氏が7月22日、ソウル市内で記者会見を行い、南当局や民間団体が行っている政治的かつイベント的な「企画亡命」の実情を暴露し批判した。「脱北者」たちの駐中各国大使館への駆け込み事件は、ここ数年頻繁に発生しているが、その計画に深く関わった人物が批判するのは初めて。最近もベトナムからの「大量脱北、移送」事件が起きているが、その実態に関連するものとして南社会で大きな反響を呼んでいる。

目当ては報酬

 「私は、ジャーナリストとしての責任感と信仰人としての良心から、脱北者たちが大使館に駆け込む姿を撮影したり、彼らのガイドを請け負うなど積極的に加担してきた。しかし、今思ってみれば、企画脱北は正義の名に包まれた構造的な悪であり、今は自分が利用されていたのだということを認めざるをえない」

 オ氏は記者会見でこのように述べながら、「企画亡命」の詳細について語った。

 彼によると、「企画亡命」の1次的な役割はブローカー業であり、成功した暁には報酬をもらうという。また、「(脱北者らが)駆け込むシーンを撮影して外国のメディアに売り、その報酬を受け取っていた」。

 「企画脱北、亡命」の狙いは米国や南、日本の一部の民間団体が「脱北者」を集め中国に駐在する領事館や大使館、学校などに駆け込ませるとともに、それを事前にメディアに知らせそのシーンを撮影し国際的に「イシュー化」させるというものだ。

 オ氏の所属する「トゥリハナ宣教会」には、「企画亡命」に成功した際には「宣教活動で成果を収めた」という「実績」が残り、同時に「宣教後援金」が入ってきたという。

 「脱北者」と呼ばれる人のほとんどは、親せき訪問などで中国を訪れた人たちだ。訪問が終われば再び北に帰るが、滞在を許可なく延ばしても一部のメディアが主張するように「死刑に処される」などということはない(「脱北者」を取材した南のジャーナリスト)。

 「およそ9割はこうした人々で、何度も北と中国を行き来している」(オーマイニュース、7月22日)。

 今年の2月、「北が化学兵器の生体実験を行っている」という英BBCのニュースの元となった偽造文書を作成したカン・ソングクの家族らも、昨年8月に中国へ渡ったものの再び北に戻っている。「私たちが犯した罪を正直に話したところ、祖国は私たちを許してくれた」と、彼の父であるカン・ビョンソプ氏は3月30日に行われた記者会見で語った。

アドバイスも

 オ氏はこの日の記者会見で、「企画亡命」と関連しTBS報道局社会部の久保雄一副部長と03年3月5日に結んだ契約書を公開した。それによると、TBSは手付金として100万円をまずオ氏に提供。そして撮影が不十分な場合は50万〜70万円、撮影は十分だが駆け込んだ施設が日本と関係ない場合は70万〜100万円、撮影も十分で日本の施設なら120万〜150万円を支払うというものになっている。

 契約書のほかに、オ氏が中国から出国できない事態が発生した場合、TBSが15日以内に「トゥリハナ宣教会」に協力費として100万円を上限とする経費を負担し、オ氏が出国できるよう可能な範囲で努力することを謳った誓約書も作成した。

 また、同年3月1日には久保氏が「広州の領事館は一軒家ではなく一般のビルに入っているので、警戒も手薄で駆け込みやすい」と、オ氏にアドバイスを与えたという。オ氏の証言により、TBSが「企画亡命」に深く関与していたことが明るみに出たが、TBSはこれを否定しているという。

 オ氏は、「この場を借りて慎重かつ冷静に行動できなかったことを深く反省する。第2、第3のオ・ヨンピルが表れないことを心から願う」と語った。

 「企画亡命」の狙いは、@朝中、北南間の政治紛争を喚起させ、A北の体制に対する強い不信感を国際的に抱かせ、B究極的には北の体制を「崩壊」させる点にある−などから、南では今回のオ氏の記者会見を機にさらに非難の声が高まっている。

[朝鮮新報 2004.8.7]