１日に１０〜１５万人利用

食料品を買う市民ら

　「私たちにとってこの市場は、新たな活動の場。従業員が団結、知恵を絞って運営方法を研究した」

　平壌市の中心部から車で約１５分、統一通り市場の運営責任者であるキム・スンオク所長（42）は、市場オープンからこの１年はあっという間に過ぎたと語る。

　朝鮮では昨年３月、これまでの農民市場を総合的な市場に拡大する措置が取られた。平壌市楽浪区域にある統一通り市場がオープンしたのは昨年８月だ。

　それまでの農民市場では、農民が庭先などで作った農産物が売られていたが、総合市場ではそういった物に加えて工業製品なども売られている。個人だけでなく、国営企業所や協同団体も市場で物を販売することができるようになったのだ。

衣類なども豊富にそろえてある統一市場 [朝鮮中央通信＝朝鮮通信]

　この総合市場を政府は、「社会主義商品流通」の一環と規定している。市場で売られる主要商品には限度価格が定められている。これまでの区域行政が管轄する「管理所」から国営企業所になった。

　統一通り市場をはじめとする各地の市場は、商品を売る個人、国営企業所、協同団体から「使用料」と所得に準じた「国家納付金」を徴収する。国営企業所である市場も当然ながら収益から納付金を納めている。

　統一通り市場は、「総合市場のモデルケース」として出発した。他の市場では、新たな制度を導入し建物や設備を改修したが、同市場は政府資金により６０００m²の敷地に新たな建物が建てられた。

　「総合市場は、人民生活の便宜を図るところに目的がある。従業員はそれを片時も忘れない」

　キム所長は、市場運営のための探求と模索を肯定的に評価している。オープンから１年の間に取り扱う商品の種類は大幅に増え、従業員らは消費者のニーズに応えるため、新商品を提供しようと努力してきた。

　現在、同市場には一日平均で１０〜１５万という多くの市民が訪れる。「必要なものがすべてあるので便利だ」と市民は口を揃える。工場で生産した製品を売る国営企業所の関係者も、「市場では売買が早い」と指摘する。

　「さまざまな商品があればそれだけ消費者の選択の幅が広がるし、購買意欲も高まる」（キム所長）

価格安定の対策

　市場であるため、商品の値段の掛け合いも日常的だ。需要と供給のバランスからくる価格の変動はあるが、「社会主義商品流通」だけに価格は自由競争ではない。

　市場の会計部員であるシン・クムスクさん（48）は、「人民生活の便宜を図ることが目的だけに、価格を安定させなければならない」と語る。そのため従業員らは価格変動の趨勢を常に注視している。

　昨年４月からは市場内で「卸売り班」を独自で運営している。国営企業所や工場で生産された製品を、国定価格あるいはそれより安価で買い取り販売する。全体の商品価格を調整することに目的があり、現在扱っているのは歯磨き粉や歯ブラシ、食用油、砂糖、塩などが主だ。

　市民はコメをはじめとする食糧や消耗品を、既存の供給網を通じて国定価格で購入できるが、こんにちの状況では量に限りがある。そのため、市場を利用する。

　シンさんによると、「卸売り班」の設置は過渡的な措置で、効果が実証されれば商品の種類を増やし「卸売り市場」の形で拡大していく計画だという。

国営企業としての自覚

　現在、市場の従業員は３６人だが、そのうち８人が「卸売り班」の運営に携わっている。約１４００の売店を有する市場を管理し、それぞれの売り上げを把握し、適切な「市場使用料」と「国家納付金」を算出するのはすべて従業員の仕事だ。

　昨年８月に定められた「市場使用料」と「国家納付金」は、今年の１月と５月に改定された。

　キム所長は、「毎週１回、平壌市人民委員会の主催で各区域の市場責任者の会議があるが、『卸売り班』に対する期待は大きい。私たちが成果を収めれば、市内の市場が商品を国定価格でまとめて購入し、それぞれの市場内で『卸売り市場』を運営していくかもしれない」と語った。

　キム所長はこれまでの経験に基づき、３つの目標を設定した。まずは、市場の運営方式を改善、発展させること、次に市場の運営を円滑に進め国家により多くの利益をもたらすことだ。そして、「企業所がさらに多くの収益を上げ、従業員の生活水準を上げること」だという。

　統一通り市場では、食堂や駐車場の運営などによって収益を上げるための多角経営も試みている。

　商品価格にそのまま反映される恐れがあるため、「市場使用料」を上げることには慎重だ。

　「本分はあくまでも人民の奉仕者」。キム所長は、市場が活気を帯びれば帯びるほど従業員のさらなる自覚が求められると強調した。（金志永記者）

［朝鮮新報 2004.9.13］