「カギは米国の政治的意志」、李根朝鮮核平和研究所副所長が核問題と北東アジア地域安保問題に関するセミナーで |
8月10、11の両日、核問題と北東アジア地域安保問題に関するセミナーがニューヨークで行われた。米国外交政策会議が主催した同セミナーには、朝鮮の李根朝鮮軍縮および平和研究所副所長(外務省米州局副局長)をはじめ米国のデトラニ朝鮮担当特使、ガルーチ元朝鮮核問題担当大使、キッシンジャー元米国務長官らが参加した。李根副所長がセミナーで行った発言の要旨を紹介する。 いわゆる「ケリー危機」と呼ばれる「第2の核危機」は、ブッシュ政権の計画的かつ打算された対朝鮮敵視政策の産物である。 01年1月、ホワイトハウスの新たな主人となったブッシュは、前政権が推進していた朝米双務関係をすべて凍結した。 また02年の一般教書演説では、朝鮮を「悪の枢軸」と規定するとともに、今年3月には核先制攻撃論に沿って朝鮮をその対象に含めた。 こうした事実は、ブッシュ政権が執権から1年の間に朝鮮に対する前政権の関与政策を全面否定し、抑止に逆戻りしたことを如実に語っている。 6.15共同宣言発表2周年を迎えた02年、北南和解のムードがさらに盛り上がった。また9月の小泉総理訪朝により、「朝・日平壌宣言」が採択され朝・日関係が包括的に妥結される政治的条件が整った。 ブッシュ政権は、「悪の枢軸」と規定した朝鮮に同盟国である東京とソウルが積極的に接近することに不安を感じるようになり、この動きを遮断しようと企図した。その理由は、南朝鮮と日本の支持をえないブッシュ政権の対朝鮮抑止政策は実現不可能だからである。 同年10月平壌を訪れたケリーは、情報資料によると朝鮮がウラニウム濃縮計画を進めていると主張しながら、計画を放棄しなければ北南、朝・日関係は破局を免れないと威嚇した。 最初の会談の相手であった金桂官外務次官は、98年の情報資料に基づいたという金倉里の例を挙げながらケリーの主張を全面否定した。しかし米国側は、彼がケリーの主張を全面否定したことに関してはこれまで一度も触れていない。 2回目の会談に出席した姜錫柱外務第1次官にも、ケリーは同じ主張を繰り返し客人として主人に礼を尽くす東方文化を無視した。 姜錫柱第1次官はこれに対し、「米国の敵視政策により、われわれはウラニウム濃縮よりすごいものを持つことになっている」と述べた。ケリーが意味の説明を求めると、「敵国である米国に説明をする必要性を感じない。思うように解釈していい」と言って送り返した。 その後ブッシュ政権は、朝米基本合意文に沿って提供してきた重油の納入と軽水炉の建設を一方的に中断した。これに伴い朝鮮は、凍結していた核計画を再開、NPT(核拡散防止条約)脱退効力発生の臨時停止を中断することを宣言し、NPTから正式脱退した。 また、米国専門家との協力で筒に保管していた8千本の核燃料棒を再処理し、その用途を変更したことを公開した。今年1月には用途変更した物を米国専門家らに現地で見せ、核活動の透明性を実証した。 これが「第2の核危機」が発生した真相である。 一貫した非核化政策 朝鮮半島の非核化は、朝鮮の一貫した政策である。 非核化は、朝米間の信頼を醸成する過程を通じてのみ実現可能である。朝米間の信頼を醸成しながら核問題を解決するための朝鮮の提案は、同時行動に基づく一括妥結案である。これは北京3者会談と第1回6者会談で提示した。 しかし米国は、複雑かつ敏感な問題なのでいっぺんに解決できないと言うので、第2回6者会談ではその第1段階の措置として「凍結対補償」案を提示した。これには、米国を除くすべての参加国が理解を示した。 第3回6者会談で米国は、「行動対行動」原則を支持するとしながらも、3カ月の準備期間を設定した全面的な核廃棄案を出した。米国のこの提案は、将来の方向性を提示したもので具体性に欠け現実が反映されていないとの評を受けた。 米国の提案に対する朝鮮の評価は、核計画を自ら申告し廃棄したリビア式を丸写しした案ということだ。 これは、廃棄の第1段階である朝鮮の凍結提案を行動措置として受け入れられない事情とも関連していると思う。 米国は凍結に補償はないという主張に固執するばかりに、凍結を行動措置として認めた場合、対応措置をとらなければならないという政治的負担を抱えることになる。 また米国の提案には、核問題が解決されれば朝米双務関係がどの水準に至るのかに関する明白な言及がなく、あいまいになっている。 土台にならない米案 朝鮮は一括妥結案を通じ、朝米の完全な外交樹立を目標としている。ケリーは7月15日、上院での証言で核問題解決後もミサイルや人権、通常兵器など多くの問題が解決されなければ朝鮮との外交は結べないと主張した。 米国の提案はその一方で、対外政策における一方主義的な傾向を反映している。 ほかの参加国は凍結に対する補償として重油の提供を行うべきと提案したが、米国が他の参加国と事前に合意したのかという疑問がわく。 朝鮮の立場は、米国の提案は議論の土台にならないというものだ。問題解決の実用的な方式を無視し、朝鮮に対し憶測と偏見だけで「先核放棄」に固執するのであれば、状況はさらに悪化するだろう。もっとも米国内のネオコンにとっては、朝鮮半島情勢の緩和ではなく悪化が好ましいだろう。 朝米双方が信頼を積み重ねる方法で核問題が解決されれば、米国にとっても想像もできない戦略的恩恵が与えられるだろう。 朝米間の核問題解決のための多者間協議が始まってから1年半が過ぎた。 これは、戦略的利害関係が絡み合う核問題の特性上、同時行動に基づく朝米のやりとりがない6者会談での論議は、果てしない対話の過程だということを証明している。 強迫には超強硬で 問題解決のカギは、米国が抑止ではなく朝鮮と関与しようとする政治的意志をもって協議に臨むことだ。 だからといって時間が経つことは米国にだけ有利なわけではない。時間が経てば朝鮮の内部事業もそれだけ推進される。 朝鮮は対話を通じた問題解決の立場を堅持するが、ブッシュ政権が関与ではなく圧殺を目的とする提案に固執する限り、突破口は開かれないというのは明らかだ。 首領崇拝は朝鮮人民の心に宿った文化的伝統である。 自らのものを守り輝かせるというのが朝鮮人民の確固とした決心である。 したがってわが制度は、一時的な難関によって瓦解しないようになっている。 われわれには誰かを恐喝、脅迫しなければならない政策的根拠はない。 米国の強迫政策に超強硬で臨むのが朝鮮の一貫した立場であり、これに関連する措置はすべて自衛的な性格を帯びている。にもかかわらず一部では、朝鮮の原則的立場に基づいた措置を体制維持のための「瀬戸際外交」と主張している。 しかし、このような主張は朝鮮の制度「崩壊」に対する未練をいつまでも捨てきれない者たちの夢に過ぎない。 [朝鮮新報 2004.9.17] |