留学同祖国訪問ツアー、参加者たちの感想から |
2年ぶりに行われた留学同祖国訪問ツアー(留学同主催)。8月12日から9月6日までの約3週間の日程で、「参観」「ウリマル」「出会い」「探求」の4つのテーマに沿ったオプションが組まれた。同ツアーに参加した3人の感想を紹介する。 残酷な歴史の上に今が、防衛力強化の理由を理解 今回、私が祖国を訪問しようと思った理由は、やはり実際にこの目で見ておきたかったからだ。 訪問経験のある家族から祖国についての話を聞いても半信半疑で、日本のマスコミの味方をしていたような私は、ある日、これでいいのか、本当の祖国はどのようなものなのか自分の目で確認しなければという思いにかられた。 毎日のように報道される祖国に関するニュースを見るたびに、祖国は全人民が金正日総書記を神のように崇める「おかしな国」だと感じていた。日本の友だちに拉致問題について話題を出されると、自分が在日コリアンであることが恥ずかしくなった。祖国についてはできる限り考えず、触れないでおこうと逃げていた。 しかし、祖国に着いたその日から私の中の「北朝鮮」は崩れていった。人も車も街を行き交い、建物も多く、ごく普通の光景が私の目に飛び込んできたからだ。 日が経つにつれ、多くの歴史的事実や悲惨でむごい過去を勉強し、交流会で人民と直接触れ合う機会が増えるたびに、新しい発見の連続で自分の無知を痛感した。 私が祖国に来て一番理解できたと思うことは、先軍政治についてだ。万景台革命学院などを参観したとき、なぜあんな幼少の頃から親元を離れてまで軍事を徹底して叩き込まれているのかわからなかった。しかし、後に信川博物館(朝鮮戦争時の米軍の一般市民に対する蛮行を展示)を訪れたとき、私の中で一つの軸としてつながったものがあった。それは、祖国解放戦争(朝鮮戦争)時、米国による人道に反した、見るに耐えない悲惨な虐殺があったからこそ、国の防衛力を強化しなければならないのであって、そのために万景台革命学院が存在しているのはすごく自然の流れのように思えた。 残酷な歴史の上に今が存在することを、私たちは決して忘れてはいけない。過去を再び繰り返さないために、そして今を乗り越えるために、人民たちは金日成主席と総書記を戴いており、そこに一心団結があってチュチェ思想があるのだと思った。 これまで、自分が在日コリアンだという意識は多少あったものの、日本学校に通う過程で日増しに薄れていき、朝鮮名を名のるだけの「日本人」になっていたように思う。当然、日本人と結婚することにも抵抗感はなかった。でも今は、在日同胞の一人として日本でも堂々と生きていきたいと思うし、同胞と結婚して子どもをウリハッキョに通わせ、民族の大切さや誇りを学ばせたいと思う。 そうすることが、祖国を愛し、民族の自主性を育てることにもつながる。これからは、自分が在日コリアンであるという自覚とその役割をしっかりと認識して生きていきたい。(朴裕恵、青山学院大学2年) 他人のために一生懸命、そんな人が住む祖国好きに 祖国を訪問しようと考えた動機は、自分の目で朝鮮民主主義人民共和国という国を見てみたかったから、この機会を逃したら二度と「今現在の朝鮮」を訪れることはできないと思ったから、同胞大学生同士、話し合ったりして楽しい訪問団になると思ったからだ。 訪問前、金正日総書記に対して抱いていたイメージは、世襲制度で国のトップに就いた人物ということだった。日本のテレビなどで、飢餓に苦しむ子どもや人々ばかり登場するので、なぜ軍隊にそれほど力を注ぐのか、と疑問を抱いていた。 豊かなのは平壌市民だけで、郊外の道端には飢えた人が転がっていると信じていた。数年後には崩壊するとすら考えていた。 そんな風に考えていた私だったが、観光や交流会を通じて多くを学んだ。 朝鮮が朝鮮戦争の廃墟から、国を建設するのに精一杯のはずだった時期に、在日同胞を忘れず、巨額のお金を送ってくれたことは、同じ民族であることだけでは説明できない何かがあるのではと思う。 教育に重点を置く金日成主席の政策には本当に感心した。人民全員が向上心にあふれており、学ぶことに最大限の配慮がなされている。そのことは、人々が常に本や新聞を読んでいることからも感じられた。 朝鮮は総書記が掲げる先軍政治のおかげで、米国との交渉においても自主性を持って対等に話し合っている。 人々が力強く生き生き働いていることも感じられた。各々が自分の思う形で総書記に尽くし、祖国のために働いている。日本に住む私から見ると、人のために一生懸命になれる朝鮮の人民がうらやましく思え、そんな人民が生活している朝鮮を好きになれたように思う。 統一に関して言えば、今の分断状態から解放されることは、すべての朝鮮民族が望んでいることだろう。過去、同じ民族同士が血を流したという不条理な歴史があった。現在も多くの若者が軍隊に従事しなければならない。だが、本当に戦わなければならない対象は「米国の支配」だ。朝鮮民族が一心団結して立ち上がり、統一の新たな形を模索していかなければならない。 祖国訪問を通じて学んだことを、留学同の学生や周りの日本人に伝え、朝鮮に対する誤解を解くよう取り組んでいきたい。民族や祖国のためにという気持ちをずっと持ち続けていかなければならないと思う。(金宜相、立命館大学2年) なぜ尊敬するのか理解、国を取り戻し守ってくれたから 私が祖国訪問を決心した理由は大きく二つある。一つは、自分の目で直に祖国を確かめたかったからだ。もう一つの理由は、他地方の留学同の学生たちといろいろ語ってみたかったからだ。 朝鮮に行く前は、独裁政権下で国際的にも孤立していて、発展していない国というイメージがあった。人民たちも心から金正日総書記を慕っているわけではなく、ある程度ポーズで、いまだに貧しい生活をしている人が多いのではと、根拠もなく疑っていた。 けれども、実際に訪れてみて、多くの人と触れ合うことで、私の認識は大きく変化した。 人民たちがあんなにも金日成主席と総書記を慕っているのは、強制でも何でもなく、心から、自らの意志で慕っていた。それは主席が国を取り戻し、総書記がその国を守っているという業績によるものだということがわかった。 南は事実上米国に統治され主体性を失っているが、北は民主的に国家を建設し、米国からの侵略の危機に晒されながらも、主体的な国家を守っている。それは取り戻した国、人間らしく生きられる生活を守りたいという、人民の強い意志があり、主席がそれを先導してきたからだということがよくわかった。人民が主席の銅像に献花し、錦繍山記念宮殿に途切れることなく押し寄せるのは、決して強制ではないことは明らかで、なぜそれほどまで人民が主席を尊敬するのかが理解できた。 「苦難の行軍」の時代、米か銃かの選択で、米を選んでいたら確かにお腹は満たされたかもしれないが、人間としての尊厳ある生活、主体的な生活は送れなかったと思う。国を奪われた経験のある朝鮮人民にとってそれは耐えがたいことだ。だから人民も総書記の指導に従ってがんばってきたのだと思う。 祖国の存在は在日同胞にも関係している。韓国は戦後補償や在日同胞の地位について何の補償も得ようとしなかったし、いつか同化するだろうと、事実上野放し状態にした。だが、朝鮮は私たち在日同胞のことを考えてくれている。民族として生きる権利、人間らしく生きる権利を奪われていた在日同胞は、これまでの運動によって少しずつその権利を取り戻している。でもそれは、守ってくれる国があったからこそだ。 祖国訪問を通じて、国の重み、その正当性、私と在日同胞と祖国などさまざまなことを学び、考え直すことができた。 これまでは朝鮮名を名乗ること、総連の傘下団体で活動することにうしろめたさを感じていた。けれども、朝鮮も総連もまちがっていないと思えるようになったし、私が戦うべき相手は、米国、日本の帝国主義、植民地主義であり、その中での問題だ。 これからは、朝鮮民族の尊厳を守り、日本社会の誤った構造を変えていくために活動していこうと誓った。自分にできることは小さいが、自分が動かないとその小さいことすらできない。留学同のトンムと共に民族のため、自分のために戦っていく。(徐麻弥、広島市立女子大学3年) [朝鮮新報 2004.9.21] |