「国家保安法」の完全廃止を、民主労働党、文化人ら活発な活動−与党3党は共同法案提出へ |
国家人権委員会の勧告(8月24日)を機に南朝鮮で高まっている「国家保安法」廃止論議。民主労働党は完全廃止を決定、文化、芸術人たちも声明を発表するなど全社会的な関心事となっている。 民主労働党は9月23日、ソウル汝矣島駅前で街頭署名と広報活動を行い、同法の撤廃を市民らに訴えた。 民主労働党は配布したビラを通じ、「国家安保は憲法と刑法で守るもの」であり、「保安法は親日、親米独裁を保護するもの」だと主張した。また、ハンナラ党などが唱える同法廃止による「安保の空白」について、「同法にあって刑法にないのは人権侵害を通じた独裁政権を維持する条項だけだ」と指摘。刑法改正や新法による補完措置に反対、完全廃止の立場を再度明らかにした。 同党の「国家保安法」特別委員長であるユ・ソンフィ最高委員は、「国連人権高等弁務官と国際人権機構までもが同法の廃止を勧告している」と述べながら、これは同法が人間の初歩的な権利である思想、良心の自由を侵害する稀代の悪法だからだと強調した。キム・ジョンチョル最高委員も、同法は「6.15共同宣言時代に北を反国家団体と規定している常識以下の法」「廃止して当然だ」と非難した。 一方、映画、文学、音楽界の文化人ら約20人が9月22日、ソウル市内で記者会見を開き、1603人の文化人らが賛同した同法廃止を求める宣言文を発表した。 宣言文を通じ文化人らは、「保安法は芸術活動を弾圧、創作意欲をくじくなど文化人の表現の自由にも甚大な悪影響を及ぼしている」「同法の廃止を通じ、権力による支配と野蛮的な暴力の時代に終止符を打ち、人権、平和、文化の時代に進むべきだ」と強調した。 記者会見に臨んだ歌手のチョン・テチュン氏は、金大中政権発足後から公安当局に盗聴されていたことに触れながら、「なぜ盗聴されるのかを検察に問い合わせたところ、逆に『過去にはある大学の教授全員の盗聴をしたこともある。何をそう騒いでいるんだ』と言われた」「支配集団がこのようなことをできないように、また私が人間らしく暮らすことができるようにするためにも保安法は廃止されるべき」だと強調した。 ウリ漫画連帯のリ・ファジェ代表も、「ドイツに招待された後輩がスパイ容疑で捕まり、3年間監獄で暮らした。それを見て、同法が一般市民に対する暴力的な法律であるということを改めて感じた」と経験談を披露した。 歌手のアン・チファン氏は、「総連の人と食事を共にして朝鮮学校で公演し、平壌市民の前では統一を訴えた私は同法の違反者になる」と述べながら、「成熟した自由民主主義と統一を志向する未来を得るためにも、『国家保安法』という亡霊の影を振り払い、文化的かつ人間的な世の中にしなければならない」と強調した。 文化人らは同法廃止を訴えるためのさまざまなイベントを企画している。15〜23日までを「『国家保安法』撤廃および表現の自由を拡大するための文化週間」と定め、同法の撤廃に向けて市民と連帯を深めていくために努力していく予定だ。 10万人が署名 また、同法の廃止を求める署名活動を行ってきた韓国青年団体協議会(韓青)は9月21日、ソウル汝矣島で記者会見を行い、「7月20日から9月20日まで署名活動を行った結果、全国で10万2267人分の署名を集めることができた」と結果を報告した。署名には、ソウルで4万4984人、釜山で1万9665人、光州全南地域で8310人が協力したという。 韓青のチョン・サンボン議長は、「同法の廃止こそ植民地時代と独裁の歴史を正し、民族和解の時代を引き寄せる第一歩」だと指摘しながら、「今後も活動を続け今年中に廃止されるよう努力する」ことを明らかにした。 また、同法廃止の立場を「変えた」朴槿恵ハンナラ党代表について、「同法の『反国家団体』と『政府僭称』条項の修正には応じるとの立場を表明したが、いくつかの条項を変えたからといって悪法性がなくなるわけではない」と批判した。その一方で開かれたウリ党に対しても、「『廃止』を党論にしたのだから、それに見合った実践的な行動に移るべき」だと指摘したうえで、「代替立法や刑法補完などの主張は自己矛盾だ」と一蹴した。 韓青は記者会見文を通じ、「刑法学者が明らかにしたように、保安法が廃止されても刑法だけで十分」であり、「17代国会はこれ以上民意をわい曲せず、ただちに保安法を廃止しなければならない」と促した。 韓青は今月末まで署名活動を行った後、結果を国会に報告し同法の廃止を引き続き促していく。 民間での廃止に向けた動きが活発化しているのを受けて、開かれたウリ党と民主労働党、民主党の与野3党は9月23日、国会で会談し保安法廃止法律案を共同提出することで合意した。 与党の開かれたウリ党が、同法廃止を「党論」に決めながらも、積極的な動きを見せないなど、若干の曲折は予想されるが、同法の廃止は世論の大勢となっている。(李松鶴記者) [朝鮮新報 2004.9.30] |