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米の「北朝鮮人権法案」、北南が強く反発、「北の崩壊」目指す悪法

 既報のように、「北朝鮮人権法案」が9月28日、米上院を通過した。今月に入ってその施行が議会で最終的に確定され、ブッシュ大統領のサインを待つだけとなった。しかし、同法案は北の体制を崩壊させることを狙ったものとして、北はもちろん南でも大きな反発を招いている。法案の内容と不当性について整理する。

多額の「支援金」

 米議会で確定された「北朝鮮人権法案」は、「北住民の人権保護」「脱北者の保護」「北住民支援のための米政府の具体的な役割および支援方法」などを明示している。

 同法案により、米政府は05〜08年の間に400万ドルを使える。このうち200万ドルは米放送委員会に割り当てられ、「自由アジア放送」や「ボイスオブアメリカ」など、対北謀略ラジオの放送時間を12時間に延長することに使われる。残りの200万ドルは、「北の人権改善」を標榜するNGOなどにあてがわれる。

 また、「北朝鮮の人権改善」という美名のもと、「体制の転覆活動」に加担する団体や個人には毎年2000万ドルもの「支援金」が支給される。

 そもそも同法案の土台は、昨年11月に米下院に提出された「北朝鮮自由法案」である。「法案」は、朝鮮半島と北東アジアの安保状況を考慮していない条項が多かったことから、米議会内でも論議を巻き起こし、その名称と内容を修正して生まれたのが今回の法案である。

 とは言え、名称と一部の内容を修正しただけで、本質的には「北の民主化、自由化」を追求する目的に変わりはなく、内政干渉的な性格が色濃く反映されている。

「対朝鮮敵対宣言」

 同法案について朝鮮は、「『法案』の追求する目的が何であるかは、それを可決する直前に共和党のある上院議員が『旧ソ連崩壊と同様、北朝鮮政権の没落も遠くない』と言ったことに集中的に現れている」と指摘。主権国家である朝鮮を中傷、冒とくし、朝鮮人民が選択した社会主義制度の崩壊を狙う米国の真意を公然とさらけ出した今一つの対朝鮮敵対宣言であると非難した(朝鮮外務省スポークスマン、4日)。

 南でも、同法案については政界、民間に関係なく非難が相次いでいる。

 南では、同法案が「南北関係をさらに悪化させるもの」との認識が強く、「米国は他の不良国家、とりわけ『悪の枢軸』と名指しされているイランやイラク、キューバに対しても『自由化』『民主化』関連法を策定している。これらの法自体が戦争状況に直結するわけではないが、その存在はこれらの国家に対する経済的、政治的圧力に正当性を与え、ひいては戦争勃発のきっかけにもなりうる」(女性新聞、10日)と指摘している。

 また、米国が北の人権実態の証拠としてあげている「脱北者」についても、「人権問題による脱北はごく少数で、ほとんどが食糧難、経済難により発生した」ことに触れながら、「94年のジュネーブ合意に対する米国の一方的な不履行が食糧難、経済難に輪をかけた」と強調。米国はまずその責任を取るべきだと述べた(同上)。

 国家人権委員会も9月30日、「法案の推進背景と内容に鑑み、法案の目的を取り巻く論議が起きるだろう」と述べたうえで、「法案の制定目的に吸収統一を目指すような言及があり、北の崩壊を追求するという疑惑を抱かせる」と指摘。「法案の純粋性」に憂慮を示した。

 一方、在米同胞の団体である「サンフランシスコ・イーストベイ移民100周年委員会」は7日、サンフランシスコでフォーラムを開催。同法案は「脱北者を量産し、北の政権を転覆させようとする陰謀」だと強調した。

 参加者らは、「朝鮮半島の統一はドイツのように一方の理念を強要するのではなく、わが民族の自主性に基づいて成し遂げられなければならない」「韓、米、日共助による統一政策は、統一の第1原則すなわち自主の原則に全面的に対置するものだ」と非難した。

 朝鮮は、「米国が対朝鮮敵視政策を転換しない限り、…朝鮮の立場から微塵の変化も期待できない」(外務省スポークスマン談話、8日)と強調しており、米国の対朝鮮強硬策の是正が今後の焦点となる。

[朝鮮新報 2004.10.14]