top_rogo.gif (16396 bytes)

〈検証〉 南朝鮮の核関連秘密実験

 南朝鮮当局は9月2日、00年1〜2月にかけて、高濃縮ウラン分離実験を行ったことを明らかにした。またその後の調査で、82年にもプルトニウム抽出実験をしていたことが明るみに出た。南朝鮮では朴正熙時代の70年代半ばに一度、核開発を試みていたことが暴露されているが、今回の事実はその後も系統的に核開発が行われてきたことを示している。しかし、米国は南朝鮮を庇護。「深い憂慮」を示していた国際原子力機関(IAEA)も最近になって事態のわい小化に務めるなど、真相はうやむやにされようとしている。南朝鮮での核関連秘密実験を取り巻く状況を整理してみた。

高濃縮ウラン分離(00年1〜2月)

国際社会で問われるべきなのは、南朝鮮だ [写真=聯合ニュース]

 00年1〜2月にかけて、ソウル市盧原区孔陵洞にある韓国原子力研究所内で行われた。レーザー分離装置を利用してウラン238を分離しウラン235に濃縮するというもので、この実験により0.2グラムの高濃縮ウランをえた。ちなみに核兵器の製造に必要なウランの量は、5〜6キロもあれば可能だと言われている。

 この事実について、「中性子吸収剤であるガドリニウムの同位元素の分離技術を研究していた研究員らが、学問的好奇心から天然ウランから濃縮ウラン0.2グラムを分離させたが、実験をすぐに中止、関連装備も廃棄した」(同研究所関係者)と釈明した。

 3回のウラン分離実験についても、「レーザー研究装置を止めて再起動した過程が3回ということで、大きな意味はない」「重要なことは実験の結果で分離されたウランの総量が0.2グラムであり、平均濃縮度が10%程度だということだ」(科学技術部関係者)としている。

プルトニウム抽出(82年4〜5月)

 韓国原子力研究所内の研究用原子炉「トリガマーク3(TRIGA Mark3)」(2000キロワット級)で、プルトニウムの抽出実験を実施し、プルトニウム抽出に成功した。

 同研究所の張仁順所長は9月10日、聯合ニュースとのインタビューで「当時、抽出実験から出た使用済み核燃料棒2.5グラムを、硝酸に溶かした溶液7リットル中、2リットルで化学処理し、ウランとプルトニウムを抽出した」「損失なくプルトニウムが抽出されたとしても、その量は86ミリグラムを超えない」と主張した。

劣化ウラン弾用、金属ウランも開発

原子力研究所内の原子炉 [写真=聯合ニュース]

 秘密核実験のほか、原子力研究所で80年代中盤、秘密裏に劣化ウラン弾用の金属ウランが開発されていたという疑惑も提起されている。民主労働党の趙承洙議員と緑連合が今月20日、国会で緊急記者会見を開いて明らかにした。

 趙議員らによると、原子力研究所が産業用として米国から輸入した劣化ウランを利用して83年からの5年間、毎年数百キロ以上の劣化ウラン弾弾頭用の金属ウランを開発していた。

 趙議員らは、中国で12日、非公開で行われた国際安保会議の内部資料を入手。それによると、原子力研究所は輸入先の米国にはもちろん、IAEAにも申告せずに金属ウランを秘密裏に開発。しかし、87年に米国の諜報機関に発覚し中断したという。

 劣化ウラン弾は、連鎖反応を起こさないため核分裂を引き起こすことはないが、核汚染や奇形児の出産などを誘発することから、非人道的兵器として国際社会で非難され、製造禁止を求める動きが表面化している。

〈朝鮮〉 背後に米国が存在−徹底解明、二重基準撤廃を

 南朝鮮での核関連秘密実験に対する朝鮮側の立場は、「透明性ある徹底解明」である。合わせて核実験が今後、2度と行なわれないよう「必要な対策」を取ることと、二重基準の撤廃を求めている。また6者会談の開催と関連して、米国の対朝鮮敵視政策放棄と共にそれらの措置が取られなければ開催問題を論議することはできないとの強い立場を表明している。

 今回の秘密核実験に対するハードルが6者会談開催問題に直結するほど高いのは、第1に「核関連秘密実験は明らかに軍事的性格を帯びたものであって、米国によってねつ造された疑いが強い」という点と、第2に「米国は、同盟国(南朝鮮)には核技術を拡散して核兵器活動と核兵器保有を黙認しながらも、思想と体制が異なるからといって、わが国に対しては根拠もない情報資料まででっち上げて平和的核活動まで抹殺しようとする二重基準を適用している」という理由からだ。(朝鮮外務省スポークスマン、9月11日)

 とくに後者については、「(米国は)南朝鮮の核兵器開発もイスラエルのように黙認しようとするのではないか」と強い不信感を表している。

知らない訳ない

 9月18日の朝鮮中央通信は、さらに一歩踏み込んで、南朝鮮の秘密核実験の背後には米国が存在すると次のように指摘した。

 「米国の情報網が張られており、軍の統帥権が米国に掌握されている南朝鮮で米国が知らずに長期間にわたって核実験を行うというのはありえないことである」「現在、南朝鮮で露になった核秘密実験はすべて、米国の技術を利用したものであり、濃縮の純度が80%であるウランは全的に核兵器開発用である」

 そして、米国関与の根拠の1つとして「IAEAの調査が終わる前に米国務長官のパウエルと国防長官のラムズフェルドが相次いで『実験室の段階に過ぎない』と断言したが、これは米国が南朝鮮の核活動の内幕を知っていたことを示唆している」と強調した。

IAEAの対応非難

 一方、真相解明はおろか、この問題を1日も早く終息させようとしているIAEAの対応を厳しく非難。朝鮮外務省スポークスマンは14日、朝鮮中央通信社記者の質問に次のように指摘している。

 「IAEAの一部勢力は、南朝鮮の秘密核実験に対する調査が終了していないのに、南朝鮮の核活動は『個別学者の単純な実験』であっただの、10月に行われる『3回目の査察は先行の2回にわたる調査活動が不足』しているからではなく、『正常な手順』であるとしながら早くから調査の意味を弱めようとしている」

 そして、エルバラダイ事務局長が6者会談の結果をめぐり、「国際社会がいらだち始めており、国連安全保障理事会が行動する時になった」と、核問題の解決が遅れているのが朝鮮の責任であるかのように発言していることについて、次のように批判した。

 「南朝鮮核問題の発生初期には『深刻な憂慮』について力説していたエルバラダイが、南朝鮮をかばう米国務長官パウエルの発言が出るなり、急に態度を変えてわれわれに言いがかりをつけるのは、彼が国際機関の事務局長であるというより米国の手先であることを示している」「われわれは、今からでもIAEAが真の使命と公正性を取り戻すことを期待しながら南朝鮮核問題の調査結果を引き続き綿密に注視するであろう」

〈国際社会〉 「(政府は無関与)納得しがたい」 米、IAEA「疑惑なし」とひ護

第4回6者会談開催条件の一つ

 南朝鮮当局は、今回明らかになった2つの核関連秘密実験について、NPT(核拡散防止条約)の保障措置(査察)協定で定められたIAEAへの申告義務に違反し実施していたという点は認めつつも、「実験は研究が目的で、科学者の発意による単発的なものであり、政府の関与はなかった」と主張している。しかし、「政府は実験の事実を知らなかったというが、実験に参加した科学者らは政府が運営する研究所で働く公職の身分である」(ロイター通信9月3日付)、「政府の関与なしに少数の研究者が独断で実験を行ったと釈明しているが、納得しがたい」(朝日新聞9月3日付)と、その主張には大きな疑問が提起されている。

 一方、米国は「韓国が自発的に明らかにし、調査に協力しているのを評価する。このようなことが起きてはならないが、透明で自発的に適切な手続きを経て事実を公開しているだけに、これ以上懸念する理由はないと考える」(9月2日、バウチャー米国務省報道官)と表明した。

 ボルトン米国務次官は9月10日、ジュネーブでの記者会見で、「IAEAとの保障措置協定に違反する行為について、二重基準は設けない」と強調したものの、パウエル国務長官は同日、「学術、実験上の目的以外の意図はなかったことは明白」だとあっさりとボルトン発言を打ち消した。

 実験発覚当初、「深刻な憂慮」を表明していたIAEAのエルバラダイ事務局長も3日、「韓国で過去行われた核実験は単なる実験であった」「(『深刻な憂慮』は)IAEAに申告されていないすべての活動に適用される言葉」とトーンダウンした。

 また、IAEAの3回目の視察団が南朝鮮を訪問することについて、「これまでの2回にわたる調査活動が不足していたためではなく、調査のための正常な手続きのため」「(これまでの調査で核実験については)韓国政府に何の疑惑もない」と付けくわえた。

 8日にはさらに、「単なる小規模な2つの科学的実験に過ぎなかった」「核兵器の開発意図があったとは思えない」と指摘。また、「われわれが見たのはプルトニウム分離とウラン製造実験だが、これらの実験はそれ自体では違法ではない」「韓国と北朝鮮の核関連状況は、比較できないほど大きな差がある」と主張した。

 一方、日本政府は「まだ具体的な内容を知らされていない」(藪中三十二外務省アジア・大洋州局長、朝日新聞9月3日付)と表明して以降、これといった反応を見せていない。

〈解説〉 真相を解明し審判を

NPT破り核実験 問われるべきは南朝鮮と米、IAEA

 ありもしない朝鮮の「核開発」について、核エネルギーの平和利用も含め「検証可能で後戻りのできない全面廃棄」(CVID)を対話の前提条件にし、敗戦国に対するかのような強硬策を取り続けている米国。今回の南朝鮮の秘密実験発覚に関しては初めからうやむやにしようする動きが顕著だ。

 発覚直後から「自発的に適切な手続きを経て事実を公開しているだけに、これ以上懸念する理由はない」「純粋な科学実験」との立場を表明。秘密核実験のわい小化を図った。

 米国のこのような態度は、「朝鮮に対しては…平和的活動まで抹殺しようとする二重基準を適用している」(朝鮮外務省スポークスマン、9月11日)という朝鮮側の指摘が正しいことを示している。

 一方、秘密核実験に伴う南朝鮮当局の対応は、国際世論の非難の的となっている。

 米ボストン・グローブ紙は9月9日の社説で、「政府系研究機関に所属した科学者にすべての責任を転嫁することは信頼性に欠ける」と指摘。核兵器開発プログラムを持っていないという南朝鮮当局の説明では不安を払拭できないと強調した。

 ニューヨーク・タイムズも同日、「高濃縮ウランは核兵器の製造以外には使い道がない」と、核兵器開発プログラムの存在を指摘した。

 こうした国際世論の反発を受け、米国は今月に入って2つの秘密核実験問題を国連安保理に回付するとの姿勢を見せつつある。いずれにしろ、南朝鮮をコントロールしている米国が核実験の事実を知らなかったとは考えにくく、国際世論に反して南朝鮮を庇護した場合、米国自身にも非難が集中することを避けるための一時的なアピールかもしれない。

 朝鮮は、米国による二重基準適用と対朝鮮敵視政策の中止を強く求めている。

 NPTに加盟し、IAEAの保障措置下にある南朝鮮と、NPTから脱退しIAEAとはなんの縁もなくなった朝鮮。そして、濃縮ウラン分離とプルトニウムを抽出した南朝鮮と、一方的に「疑惑」だけを提起された朝鮮。どちらが国際社会において問題なのかは一目瞭然である。だから、秘密核実験の真相は必ず明らかにされるべきなのである。(李松鶴記者)

[朝鮮新報 2004.10.25]