〈第3回朝・日政府間実務接触〉 期間延長し共同作業、問題解決に向け協力精神発揮 |
既報のように、朝・日政府間実務接触が9〜15日まで平壌で行われた。今回の実務接触は5月の第2回朝・日首脳会談以後、3回目となる。これまで双方外務省関係者が参加した実務接触では、朝・日平壌宣言(02年9月17日採択)履行に関する一連の問題と両国間の懸案が討議されてきた。今回の実務接触では平壌宣言履行の環境整備において障害となっている拉致被害者の安否問題について、朝鮮側がその調査内容を日本側に通報した。 双方の捜査機関が初対面
今回の接触のため日本側からは、外務省の藪中三十二アジア大洋州局長を団長とする19人のメンバーが平壌を訪問した。これには、警察庁関係者も含まれていた。 朝鮮側からは、外務省の局長、副局長クラスが接触に参加し、調査委員会のメンバーとして活動した人民保安省(日本の警察にあたる)の関係者も同席。接触では、調査委員会の責任者であるチン・イルボ人民保安省局長が直接対応し、調査内容について説明して資料を提示した。 朝・日の捜査機関関係者が対面し、拉致被害者の安否確認作業を行ったのは、今回が初めてのことだ。外務省関係者のみ参加した過去の実務接触と比べても、実質的な前進がなされたと評価できる。 拉致被害者の安否調査は、相手側の誠意を前提とした協力関係が欠かせない。朝鮮側は困難な作業を続け、日本側も真しな態度で提出された資料の検証作業を行った。一方的な主張と責任追及で問題が解決されないことは過去の経緯からも明らかである。 朝・日平壌宣言の精神は、両国の敵対関係を協力関係に転換させる過程を通じて懸案問題を解決していこうというものである。両国の外交交渉はそのためのステップである。平壌で行われた実務接触の現場では、朝・日平壌宣言履行のため、互いの主張と行動を調和させていこうとする関係者の努力がかいま見られた。 6月に再開された調査活動 拉致被害者に関する調査は、朝・日関係を取りまく政治状況の影響を受けてきた。実際に朝鮮側の調査委員会は、朝・日関係が悪化する過程で、その活動が中断された。
拉致被害者の安否に関する調査は、「9.17」を契機に突然、浮上した問題ではない。それ以前から朝・日の赤十字団体が双方から依頼された行方不明者の調査を行っていた。02年8月に平壌で行われた朝・日赤十字会談では、朝鮮側で調査を担当した人民保安省関係者が日本側に調査の過程の説明をしたことがある。 朝鮮側は、調査の過程で拉致の事実を確認し、その内容を02年9月17日の朝・日首脳会談で日本側に伝えた。その後、拉致被害者の安否と関連する1次調査の資料も日本側に提供した。 一方、日本国内では拉致問題を背景に「北朝鮮バッシング」が展開された。朝鮮との関係改善に反対する強硬派と呼ばれる個人や団体は、拉致被害者安否確認のための実質的な努力をするどころか、両国の関係を悪化させる言動を繰り返すことによって朝鮮に敵対する世論を作り上げ、朝鮮に対する敵視政策を正当化した。 これは、問題解決のブレーキとなった。朝・日両国は不信と敵対の悪循環に陥った。日本側は、1次調査に対する疑問点を整理し、朝鮮側に拉致被害者の安否に関する再調査を要求したが、朝鮮国内では反日世論が高まり調査を継続することができなくなった。 いったん解散した調査委員会が活動を再開したのは、今年の6月。朝鮮側は、第2回朝・日首脳会談の後続措置として再調査に着手した。以前の資料に捉われることなく、白紙の状態から調査を始め、日本側が指摘した問題点も考慮して活動を行った。この過程で一部確認された事実は、8月と9月に北京で行われた実務接触で通報された。 今回の平壌接触ではさらにまとまった資料が提供された。日本側は、資料を裏付ける聞き取り調査、現場検証を行った。それは一種の共同作業であったといえる。当初、4日間だった実務接触の日程は2日間延長された。 宣言に基づけば前進可能 5月の第2回朝・日首脳会談は、朝・日間に肯定的な変化をもたらした。拉致被害者の安否に関する調査活動が再開されたのも、首脳会談の結果だ。 第2回朝・日首脳会談では平壌宣言の精神と原則が再確認され、両国の関係を正常化していく双方の意向が確認された。 日本国内には、依然として朝鮮との関係改善に反対する声があるのも事実だ。しかし第2回首脳会談後の現実を客観的にみれば、小泉総理が自民党総裁の肩書きで総連第20回大会あてに祝賀メッセージを送るなど、信頼回復と関係改善に向けた大きな流れができている。今回の実務接触も着実に進展する朝・日関係の現状を示すものと言える。 地理的に近く歴史的にも連携の深かった両国が共存、共栄していくことは、双方の利益にもなり、アジアと世界の平和と安定にも有益である。協調は充分に可能だ。 実際に今回の接触期間、中断されている6者会談の朝鮮側、日本側の代表らが会談し、意見を交換した。朝米関係はこう着状態にあるが、朝・日両国が平壌宣言を重視し信頼回復に努めるならば、問題をひとつひとつ解決し、隣国としての関係をさらに発展させることができるであろう。【平壌支局】 [朝鮮新報 2004.11.18] |