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〈月間平壌レポート〉 米大統領選と「地磁気」ショック

 【平壌発=姜イルク記者】11月2日に行われた米大統領選挙でブッシュ大統領が再選したが、平壌市民はその結果には、まったく動揺していない。日本など、外部では朝鮮に対するさまざまな憶測報道が行なわれているようだったが、平壌はいつものように「緊張の中にも平穏」が保たれていた。

テレビ通じて異例の呼びかけ

秋の平壌の風物詩、「焼いも」屋台

 7日昼、映画を放映していたテレビ画面下方に突然、字幕が流れ、「地磁気(地球磁気)爆風に注意せよ」と呼びかけた。米国で大統領選挙が行われた週の日曜日のことだった。

 3日から5日にかけて太陽面の東部と中心部で爆発が起き、その影響が7日から3日間ほどあるというのだ。

 朝鮮では、天気予報とともに「地磁気」の予想日を市民に知らせながら、とくに心臓病などの病を患っている人に注意を呼びかけている。

 しかし、テレビ画面を通じて緊急注意を呼びかけるのは異例のことだと言える。さらに、「爆風」という表現が珍しいこともあって、市民の間では「地磁気爆風」という言葉が一時、流行語のようになった。

 市民らは、何か失敗をしても、「地磁気現象」の影響だと言いながら、笑い流していた。

 今月下旬、「地磁気」の影響(?)によるちょっとした健康上の不注意で平壌親善病院にお世話になったが、同院での話題も「地磁気爆風」のことだった。同院の医者、看護師らによると、「地磁気」の日、とくに重病の患者には気を配ったという。

 ちなみに、「地磁気」という言葉は日本ではあまり耳にしないが、ほかの国々には「地磁気」を研究するチームがある。

 「地磁気」による影響、被害の程度はさておき、市民の話題は、米国での大統領選よりも「地磁気」だったことは確かだ。

 米国での大統領選挙結果に対する反応を多くの市民から聞いたが、一様に、「どのような対朝鮮政策を取るのかに関心があるのであって、誰が大統領になろうと関係ない」というものだった。結果にはそれほど関心を示していなかった。

 平壌の11月の風景とも言えるキムジャン(キムチを漬けること)、焼いも屋台に加え、「地磁気」の話題で、表面的にはとても平穏な日々だった。しかし、その平穏の中には緊張感が常に漂っていた。

鳴り響くサイレン、「無人都市」に

 ある日の夜7時半、突然サイレンが鳴り響いたかと思うと、市内は真っ暗闇に包まれた。「退避訓練」と呼ばれるものだ。23、24の両日、昼と夜の各1時間ずつ実施された。

 夜の訓練は、ネオン、アパートの照明はもちろん、自動車のライトまでもいっせいに消される。唯一、例外になっている国際ホテルの明かりだけが煌々と光っていた。

 一方昼の10時半から11時半までは、平壌市が「無人都市」と化した。市民らは指定された場所に集結。人と車両の通行、移動が一切禁止される。

 外部からの攻撃に備えたこの訓練は定期的に行われているもので、年末と3月に行われることが多い。

 平壌では、いつ戦争が起きても対応できるシステムがすでに構築されているという。軍隊はもちろん、一般市民も常に準備万端ということだ。米国との「核対決」にもかかわらず、市民らから余裕さえ感じられるのも、このような準備ができているからであろう。
市民らは、「一心団結」の強力な抑止力があるからこそ、米国は朝鮮に対し絶対に攻撃できないと思っている。

 それどころか、逆に強硬論まである。米大統領選の結果に対する市民の反応、というテーマで取材した折り、多くの市民が、「早く祖国統一を成し遂げるためにも、一度は米国と戦うべきだ。真の戦争というものを味あわせてやる」と語っていた。米国に対する憎悪と不信感は、非常に根強いことが窺えた。

意義深い来年に向け年間計画達成へ

 第4回6者会談開催のメドが立たず、北南関係も遮断された中、明るいニュースが飛び込んできた。金剛山で23日から24日にかけて、北、南、海外代表らの実務接触が行なわれ共同報道文が発表されたのだ。

 朝鮮中央通信によると、北、南、海外の各階層団体代表らは、6.15共同宣言発表5周年、祖国光復60周年になる意義深い来年を「自主統一の元年」に定め、6.15、8.15に際した統一行事をそれぞれ平壌、南側地域で行うことにした。この事実は国内のテレビ、新聞でも一斉に報道された。

 6.15共同宣言発表からの約4年半、これまで北南関係が紆余曲折を経る中でも、民間が統一の雰囲気を高潮させ、中断されていた当局間の会談にも結びつけるなど、統一運動を主導してきた。

 祖国光復60周年、6.15共同宣言発表5周年を迎える意義深い来年を大きな成果をもって迎えるため、市民たちは年間計画達成に向け汗を流している。

[朝鮮新報 2004.11.27]