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NHKの「女性国際戦犯法廷」番組改ざん裁判で製作会社に賠償命令

池袋で行われた報告集会

 NHKが01年1月に放映した「女性国際戦犯法廷」に関する番組で、取材に協力した「戦争と女性への暴力」日本ネットワーク(VAWW−NETジャパン、共同代表=西野瑠美子)などが「当初の企画を変え、約束通りの番組を放送する法的義務を怠った」として、NHKと制作会社「ドキュメンタリー・ジャパン」(DJ)など2社を相手取り総額2000万円の賠償を求めた訴訟の判決が3月24日、東京地裁であった。

 小野剛裁判長は「番組内容は事前の説明と異なり、取材される側の信頼を侵害した」と述べ、取材担当の制作会社DJにのみ100万円の支払いを命じた。しかし、NHKについては「説明や取材行為に関与していない。NHKが行った編集は放送事業者に保障された編集の自由の範囲内」と請求を棄却した。原告側は「末端にだけ責任を押しつけた」と判決を厳しく批判した。

 00年12月、東京で開かれた、日本軍性奴隷制(「慰安婦」制度)を裁く「女性国際戦犯法廷」には、8カ国から64人の被害女性を迎え、内外2000人を超える参加者に、世界的に著名な国際法の専門家である裁判官たちが「昭和天皇有罪、日本国家に責任」という歴史的な判決を下した。「法廷」は、被害女性たちが求める正義を実現するための1つの方法として国際市民社会が開いた民衆法廷である。

 裁判は、NHKがETV特集としてこの「法廷」を記録する番組の制作を企画したが、番組放送中止を要求する右翼団体の圧力により、番組内容が大幅に改ざんされ、1月30日に「問われる戦時性暴力」のタイトルで放映された番組には、「法廷」のフルネームも、主催者も、起訴内容も、「天皇有罪、日本の国家責任」を認める判決も全く紹介されず、「法廷」を評価する解説者のコメントもカットした。逆に番組は「法廷」を批判し、「慰安婦」制度は売春で証言は根拠がない、などという右翼学者のコメントを長々と流すという大幅に異なる内容になっていた。これに対し、主催者側のバウネットらが、番組を制作したNHKなどに対し、視聴者に誤解と偏見を与え、被害女性たちを侮辱し、「法廷」を開いた人々の名誉を傷つけるものとして、東京地裁に提訴したもの。

 裁判は、01年7月の提訴から15回の口頭弁論を経て、03年12月15日結審し、この日、判決が下された。

 同日夕方、東京池袋の東京芸術劇場大会議室で、同裁判の報告および学習会が開かれた。集会では、NHK裁判弁護団による報告と、元NHK政治部の椙山女学園大学川崎泰資教授の特別講演「判決を受けて・NHKの体質とこの裁判」が行われた。川崎教授は、この裁判は「番組改ざんに途中で介入したのが誰なのか、なぜ改ざんされたのかが明かされていないのが問題」とし、「あのような改ざん番組を作っておいて、真実を述べないのは、国民に対する2重の詐欺行為」であるとNHK側を強く非難した。そして、この問題の背後には「天皇制」があることを指摘した。(金潤順記者)

[朝鮮新報 2004.4.5]