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〈月刊メディア批評〉 「経済制裁」を正当化する朝日新聞

 米国と朝鮮民主主義人民共和国(朝鮮)との間の核問題を話し合う第2回6カ国協議が2月25日から28日まで北京で開かれ、すべての参加国が「核兵器のない朝鮮半島を実現する」ことを誓った。朝鮮の主張に沿った画期的な合意である。また、6者協議の作業部会が4月に開催される方向で調整が進んでいる。

 日本は6カ国協議に参加しながら、朝鮮に対する「経済制裁」という脅しを続けている。外為法「改正」法の成立の後は、万景峰(マンギョンボン)号など朝鮮船舶の入港禁止を可能にする「特定外国船舶の入港の禁止に関する法案」も準備されている。

 民主党も朝鮮との船舶と航空機の往来を止めることができる時限立法を検討している。現在、ほとんど飛んでいない日朝間の航空機往来を「禁止する」という「野党第一党」の発想に呆れてしまう。これでは「官主党」と党名を変えたほうがいい。

 私は3月31日、「特定船舶入港禁止法案」に反対する近畿地方在日朝鮮人緊急集会で連帯の挨拶を行った。国連での決議もなしに経済制裁を加えるという脅しは、国際法に違反した宣戦布告にも等しい挑発行為だ。また、一昨年9月17日の平壌共同宣言に違反する暴挙でもある。

 長年、リベラルだと言われてきた朝日新聞は3月12日の社説は「カードを競うのではなく 北朝鮮制裁」と題して「6者協議が先月相次いで開かれたが北朝鮮側の態度は硬かった」と述べて次のように論じた。 

 「確かに、北朝鮮との外交は一筋縄ではいかない。6者協議への参加を選択したとはいえ、核開発で脅して見返りを求める姿勢を基本的に改めてはいない。国際的な人権感覚も通じない。金独裁体制の維持がすべてに優先するゆがんだ国家である。

 そんな相手を交渉に引き出し、譲歩させなければならない。一定の制裁を発動できる用意をしておくことは意味のあることだし、外為法改正が日本の強い意思を伝えるうえで効果があったことも間違いない」などと述べた。 その上で、「対話と圧力をいかに使い分けるか」が重要だと結論付けている。

 自衛隊は軍隊だから、憲法を変えなければならないなどという首相がいる日本こそ、ゆがんだ国家だ。小泉、公明党独裁体制ではないか。過去の侵略に関する日本の「国家無答責」を問わず、「拉致」ばかりを強調する朝日新聞こそ、国際的な人権侵害も通じない新聞社だ。

 毎日新聞によると、政府の拉致被害者対策を担当する中山恭子内閣官房参与は3月23日、東京都内で講演し、北朝鮮側が日本との政府間交渉に応じない状況が続いていることについて「北朝鮮が全く誠意のない態度を取り続けたり、引き延ばすだけという状況が続けば、厳しい措置を取るべきだという意見は強まってくる」と、改正外為法に基づく経済制裁の可能性を示唆した。

 また川口順子外相は同日の参院予算委員会で、米国が四月に改定するテロ支援国リストについて「日本政府は、これまでの経緯、拉致被害者の家族の意向を踏まえて、リストに拉致問題を明記するように米国政府に伝えてきた。米国は日本の要請も踏まえ今検討していると聞いている」と述べ、米国が拉致問題をリストに明記するとの見通しを示した。

 極右首相と霞ヶ関官僚の言いなりになっている2人の女性は、日本を破局に導こうとしている。

*怖い日本社会
 朝日新聞が朝鮮総連にスポットを当てたひどい連載始めた3月1日、ある在日朝鮮人の友人が、「日本はおそろしい国に変貌していこうとしているようで恐怖心を覚える。今後、私や私の家族はこの地で暮らしていけるのだろうか。」 というメールを送ってきた。

 ルポライターの姜誠さんの近著『越境人たち 六月の祭り』(集英社)を読みながら、涙が出た。姜さんが日本に生まれて以来、受けてきた差別の一つ一つがすさまじい。姜さんのことを長く知っているのに、この本で初めて知ったことがたくさんあった。

 姜さんは3月13日の朝日新聞「オピニオン」のページで、「被害受ける弱者に思いを」と題して、「送金や船の行き来が制限されて困るのは北朝鮮の支配層ではなく、たとえば私の叔母やいとこなど、日本の親類からの援助に頼る約10万人の『帰国者』や、飢餓に直面し人道支援に頼る弱い人たちだ」と指摘、「戦争の実相を知らない若手政治家が率先して経済制裁の法案を作ったことに危惧を感じる」などと述べている。

 日本人読者にかなり気を使って書いた記事だと思ったが、姜さんに多数の嫌がらせメールが届いたという。

*元郵政相、箕輪登氏の警告
 郵政相を務めた箕輪登、元衆議院議員は1月、小泉政権の自衛隊イラク派兵が憲法と自衛隊法に違反しているとして、札幌地裁に提訴した。箕輪氏は3月23日、小樽の自宅で朝鮮との関係について、「気が合わないからと言って、武力行使をちらつかせたり、経済制裁するからと言って、脅すのが一番よくない。外交とは気の合わない国とどう向き合うかを担当するところではないか」「イラクへ自衛隊を出すということは、米国が北朝鮮を攻撃する場合、自衛隊も朝鮮に出兵するということだ」と話した。

 日本の企業メディアは、権力と一体になって、日朝問題で「拉致」がすべてのような報道を続けている。「拉致」被害者の取材は政府と自民党政治家が厳しく統制している。

 日本の企業メディアと公共放送は、憲法、自衛隊法違反の自衛隊の「イラク参戦」取材で、メディア界は自衛隊員の安全や隊員、家族のプライバシーを守るなどと誓約した。 これこそ報道の自由を自ら侵害する自己検閲である。日本の「識者」と人民に我々にいま求められているのは、日本の報道界の大政=体制翼賛化と大本営報道の危険性を見抜くことである。(浅野健一、同志社大学教授)

[朝鮮新報 2004.4.6]