〈滋賀県高月町キムチ講演会〉 キムチが町の名物に |
既報のように滋賀県高月町中央公民館で2月27日開かれた鄭大聲教授による「キムチ講演会」には町内外から多くの人が参加した。 講演の後、北村又郎高月町長は「歴史の中で日本は、何度も何度も朝鮮に対してお詫びしなければならないことがあった。このことを踏まえて、歴史の歯車を前進させなければならない。町内の雨森地区が日朝外交に尽くした江戸時代の儒学者・雨森芳洲の出身地であることから、キムチを町の特産品にしようと町商工会が96年から『高月くんのキムチ』を発売している。これもみな郷土の偉人・雨森芳洲の遺徳であろう。今後もキムチを通じて日朝交流の心を伝えていきたい」と述べた。 同町では毎年11月に「高月町キムジャン」を開き、町内外の人々が参加してキムチ漬けを行い、キムチの普及と販路拡大に努めてきた。
また、講演会には熱烈なキムチファンを自認する滋賀県立大学安居正倫事務局長(60)も出席。安居さんは大学に移るまでは滋賀県男女共同参画セクションの部長だった。「『男子厨房に入らず』という考えは古い。食事作りはできれば男女が共同でやりたいもの。男性も普段からやり馴れていると楽しくなるもの」とまず食事作りの心得を話す。 仕事で世界中を回っているが、中国や韓国にはすでに15、6回訪れた経験がある。自然に辛いものに舌が馴れてきたと言う。「留学生たちをもてなすのに、一番喜ばれるのが、キムチチゲなどの鍋もの。みんなで鍋を囲んで、楽しく酒を飲んで、談笑しながら心を通わすためにもキムチは欠かせません」と話す。 安居さんは「『女やもめに花が咲き、男やもめにウジがわく』と言われないためにも、(男性も)キムチ漬けでも何でも挑戦すべきだ」とキッパリ語った。 講演会の後、場所を高月町ルナハウスに移し、「キムチ体験教室」が始まった。町内外から約80人程が参加したが、そのうち半数近くが男性たち。馴れた手つきでニンニクの皮むきをして、ヤンニョンを白菜に塗り込んでいた今津町議会議員山内敬さん(56)は夫人の陽子さん(47)と一緒に参加した。 「2年前から1週間に1回漬けて食べている。アンチョビ、桜エビ、柿、リンゴ、アミの塩辛をいれるとおいしい。おいしい秘訣?『根気と愛情』ですね」とすっかりキムチ漬けにはまっている。
また、近江八幡市の食文化研究家で映像作家の坪田真一さん(73)は、毎日の食事によって、健康を守ることが最も大事だと考えている。 「健康という意味ではキムチは最高の食品。成人病予防、整腸作用、肥満予防、老化防止、抵抗力の高揚などあげたらきりがない。とりわけ発酵して生成される乳酸菌には、体内脂肪を燃焼させ、便秘にも効果的。こんなに健康食としてすばらしいキムチを自分の手で作ることほど幸せなことはない」と語る。 坪田さんの好物はそれだけにとどまらない。参鶏湯、石焼きピビンバプ、チヂミ…なんでも自分で作る。それも、釜山のチャガルチ市場に時々買い出しに出かけるほどの本格派。「妻に先立たれ、娘と暮らしているが、朝鮮料理はすべて私の手作り。娘は食べてはおいしい、おいしいと言って自分では作らない」と苦笑する。 キムチの唐辛子と乳酸菌パワーのおかげでこの何年も風邪一つひかないという坪田さんは世の高齢者たちにこう勧める。 「失敗を恐れず何でも挑戦してみること。毎日の食事で生命を癒し、体にやさしいものを取ることが一番大切だと思う」 初めてキムチ作りに挑戦する初心者もいれば、すでに家庭で何種類ものキムチ作りを楽しんでいるベテランまで多彩な顔ぶれ。どの人も本格的なキムチの味を覚えようと真剣そのものだった。 「キムチの味は白菜のできによってもたいぶん違いますね」 「ただ辛いだけではない。あのまろやかさが最高ね」。和気あいあいと続く参加者同士の何気ない会話の中に、いかにキムチが日本の食卓に根づき、愛されているかが実感できた。(朴日粉記者) [朝鮮新報 2004.3.19] |