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山岳カメラマンの岩橋崇至さん、4月から本紙に連載、タイトルは「朝鮮名峰への旅」

 4月から、本紙で「朝鮮名峰への旅」を2年間連載予定の山岳カメラマン・岩橋崇至さん。日本を代表する山岳カメラマンで、父は東京芸大教授で日本芸術院会員、文化勲章を受けた日本画家の故岩橋永遠さん。その美しい幻想的な画風を思わせる岩橋さんの「山の世界」は、多くのファンを魅了してきた。岩橋さんにとって白頭山とは、どんな山なのだろうか。

 「学生時代からの憧れの山だったから、出版社から話があったとき、二つ返事で引き受けた」

 思い描いていた通りの雄大な山容。無限の変化を見せるその美しさ。白頭山はたちまち「世界でも指折りの自然写真家」を虜にしてしまった。

 「初めて白頭山に行ったのは、91年5月の半ば。冬枯れの荒涼とした景色が広がっているだけで、撮るものが何もないというのが、最初に受けた正直な印象だった。それが山頂に立った途端、天池(山頂のカルデラ湖)越しに大陸の果てしない姿が広がり、シベリアからヨーロッパまで歩いて行けるのだという、日本にはない雄大なスケールと迫力に圧倒された。これはすごい、これが大陸の山なんだと、心が躍るようだった」

 山岳写真の妙味は「空、光、影、色、そのすべてが、完全な調和を見せる一瞬」にある。それをとらえるために、時に、人を寄せつけない自然の猛威に身を委ねなければならない。

 「12月に登った時、気温はマイナス35度、風速は30メートル。突風に体がよろめき、地に叩き付けられる。強風が運ぶ小石や氷の塊が顔に当たり、露出している顔はあっという間に凍傷の洗礼を受けた。ヒマラヤの6500メートルほどの山に登った時と同じ装備で、白頭山に登ったが、その強風と寒さは凄まじくて、ヒマラヤの方が楽だった」

 長い冬が去ると、白頭山にも短い春がやってくる。 「天池の氷が割れるのは、だいたい平均して6月の下旬から7月。氷は表面から先に溶けるが、6月の初旬頃は、その水が溜まって氷の上に広がり、一見割れたように見える」

 「ずうっと季節を追っていると特に冬から春への変化は劇的だ。徐々に徐々に融雪しはじめ、そして、いっせいにキバナシャクナゲなどの高山植物が咲き始めて…。このような大花畑はもう日本では見られないと思う。大噴火から千年というと、山はまだ新しくて若い命だが、目に見えて成長する生命力の強さの、ほとんど荒らされていない原始的な美しさに心を打たれた」

 「夏の天池では、たくさんの蝶が岸辺に打ち寄せられていたのを見た。湖面に映った青空を見間違えた蝶が、次々と水面に吸い寄せられ、溺れ、岸辺で羽を休ませていたのだ」

 今、日本のメディアの朝鮮の話題はもっぱらネガティブなものばかりだと岩橋さんは顔を曇らす。

 「私の撮影を助けてくれたのは、おおらかで親切な人たちばかり。人も自然も大陸的でメリハリがあって、つきあいやすい。古代からさまざまな文化的な恩恵を受けてきた朝鮮との交流が自然にできるように願っている」

 朝鮮の自然の豪快で、繊細な息づかいをシャープにとらえた3万枚のフィルム。その中から選りすぐった作品を紹介していきたいと抱負を語った。(朴日粉記者)

[朝鮮新報 2004.3.25]