ユネスコ親善大使の平山郁夫氏に聞く |
【平壌発=文光善、李松鶴記者】高句麗古墳群の世界遺産登録に向け支援活動を続けているユネスコ親善大使の平山郁夫氏(東京芸術大学学長)が、昨年に続き13〜17日にかけて訪朝した。6月、中国で予定されている世界遺産委員会での展望、訪朝の感想などについて話を聞いた。 高句麗古墳群の世界遺産登録 「今年は大丈夫」
今回の訪朝目的は、今年6月に中国・蘇州で行われる世界遺産委員会に朝鮮政府が高句麗古墳群の登録申請をしていることと関連し、朝鮮文物保存局と打ち合わせをするためだ。また、4月の春親善芸術祭典への参加もかねて招待された。 今回は、よほどの国際情勢の変化がない限り高句麗古墳群は世界遺産に登録されるだろうと思っている。2月にパリで行われたユネスコ国際会議で、議長国である中国教育部をはじめ、いろいろな関係者にお会いしたところ、「今年は大丈夫」という答えが返ってきた。 世界遺産登録は、毎年1国1案件なので、他国が同じ案件を申請したからといって登録されないということはない。たとえば古代ローマ帝国の遺跡は、中心はイタリアのローマだがイギリス、フランス、アルジェリアなどにもたくさんある。それらはみな世界遺産になっている。仏教寺院に関しても同じで、本家はインドだが、中央アジア、中国、日本のものも世界遺産になっている。 今年はおそらく、中国吉林省にある集安の遺跡と朝鮮にある高句麗の古墳群遺跡が世界遺産に登録されるだろう。 とても協力的な南 この問題に関しては南もとても協力的だ。来月ソウルで講演する予定だが、テレビ局からその様子を放映したいという申し入れがあった。彼らは「なぜ昨年、世界遺産に登録されなかったのか」「今年はどうなのか」と、この問題に相当な関心を持っている。統一に向けて文化面では交流が進んでいることを感じた。また、イタリアやフランスの新聞も、高句麗古墳群の世界遺産への登録を応援している。 平壌滞在中、文物保存局の関係者と協議したほか、ユネスコの民族委員会の方とも協議した。また、社会科学院の関係者ともお会いしたが、日朝国交正常化以前でも、遺跡に対する日朝共同発掘を計画しているようだ。 滞在中、徳興里古墳と数年前から発掘を始めて現在調査が進められている江西区域の台城里古墳などを見てまわった。現在、文物保存局は古墳群の保存に力を入れているようで、古墳群までの道路整備や古墳群周辺地域の整理なども順調に進められていた。 小異捨て大同に 15日に行われた金日成主席の誕生日を祝う夜会に参加した。いろんな国の人たちと朝鮮の若い人が一緒に踊っていてとても華やかだった。日本からもいくつかの代表団が来ていた。著名な狂言師の野村万之丞さんが昨年に続き訪問されていたし、祭典にずっと参加されている歌手の小笠原美都子さんも現役でがんばっておられた。とてもいいことだと思う。 現在、日朝関係は非常に厳しい状況にあるが、やがてこれを乗り越えて近い将来、国交正常化の道に進むと思う。国交正常化のためにはいろいろな問題があるだろうが、できるかぎり協力していきたい。 日朝の国交正常化は中国、朝鮮半島を含めた東アジアの平和と安定に貢献し、さらには東南アジアや西アジアの情勢にもいい影響を与える。そうなればアジア諸国とアメリカ、ヨーロッパ諸国とのバランスが、友好を通じてよくなっていく。だからこそ、小異を捨てて大同に立つ努力が必要だ。 高句麗古墳群の世界遺産登録を周りの国々が応援し、その過程が諸問題を平和的に解決できるきっかけになればと思っている。 [朝鮮新報 2004.4.22] |