〈みんなの健康Q&A〉 肥満症(上)−規定と原因 |
Q:最近おなかが出てきて、体が重くなったような気がするのですが。 A:身長と体重はいくらくらいですか。 Q:身長は175pで、体重は82.5Kgす。 A:では、それから体重指数(BMI=体重Kg÷「身長mの2乗」)を計算してみましょう。すなわち、82.5÷(1.75×1.75)を計算してみると、約26.9ですね。これは肥満度の判定基準からみると、軽度肥満にあたります。 Q:すぐに減量しなきゃいけないということですか。 A:いやいや、そんなにあわてることはないのですよ。まだ肥満症と決まったわけではないのですから。 Q:え、肥満症? A:そうです。肥満は、糖尿病、高血圧、高脂血症、あるいは心臓病などの生活習慣病の発症に大きく関わっています。しかし、肥満と疾病の関連性については、必ずしも肥満の程度だけで規定されるわけではなく、むしろ脂肪の蓄積がどこにあるのかがより重要なのですよ。今では、単に身体状況としてとらえる肥満に対し、肥満に起因ないし関連し、減量を要する健康障害を有するあるいは有する確率の高い状態を「肥満症」として明確に区別するようになりました。これはひとつの疾患単位と考えてよいのです。 Q:肥満に起因ないし関連し、減量を要する健康障害にはどのようなものがありますか。 A:もうひとつ、肥満症の診断は「内臓脂肪の過剰蓄積の有無」の判定からもなされます。それは、立位、呼気時に計測した臍周囲径(おなかの周り)が、男性85cm以上、女性90cm以上の者を上半身肥満の疑いとし、腹部CT検査で内臓脂肪面積を計測し、100cm3以上の場合に内臓脂肪型肥満と判定し、肥満症と診断します。 Q:見ためが太っているからといってすぐ病気と結びつけることはないわけですね。欧米人とアジア人とでは体型が異なるので、肥満の評価の仕方も違うのですか。 A:その通りです。WHO(世界保健機関)の判定基準では、BMI25〜30は前肥満で、30を超えると肥満となっています。一方、日本肥満学会はBMI25以上を肥満と判定しています。これにはふたつの理由があります。ひとつは体格の違いで、欧米人、とくに白人ではBMI30を超える人が人口の2〜3割ぐらいいるとされていますが、日本ではその10分の1程度しかいません。ところが、日本人は欧米人よりも少ない体重で、糖尿病などの生活習慣病を発症しやすいという特徴があります。それは、内臓のまわりにつく脂肪と関係しているらしいというデータが出されています。ふたつめは、いろいろな疫学調査の結果、日本ではBMI22の人が病気に最もなりにくいということがわかりました。すなわち、最低有病率を示す点数はBMI22であり、例えば、BMI22の人に比べBMI25になると高血圧の危険度が2倍に上り、BMI27になると糖尿病の危険度もやはり2倍になります。以上から、日本人の場合にはBMIが25を超えたら肥満と判定したほうがよいということになったのです。もちろん、これは食生活や体型の似ている我々在日朝鮮人にもあてはまると認識すべきでしょう。 Q:男女間では何か差はあるのですか。 A:さきほど疾病危険度の高い内臓脂肪型肥満の話をしました。男性と女性では性ホルモンの違いから脂肪のつく場所が異なり、男性には内臓脂肪型が多くて、女性では皮下脂肪が厚くついた皮下脂肪型が多く、内臓には比較的脂肪がたまりにくいとされています。相撲取りが太っているのは、たいていこの皮下脂肪によるものと思います。このような理由から、臍周囲径の肥満基準が男性ではきびしくなっています。 Q:肥満の原因は何でしょうか。遺伝も関係しますか。 A:肥満は長期にわたるエネルギーの不均衡によって生じます。つまり、食事から摂取するエネルギー量よりも消費されるエネルギー量のほうが少ないと、その差が脂肪として体内に蓄積されるのです。親と同じ体型になりやすいということで遺伝も気になりますが、結局は食べ過ぎと身体活動量の少ないことが主な原因なのです。 [朝鮮新報 2004.4.30] |