〈本の紹介〉 「海をわたった家族」 |
安さんがカルチャーセンターの「エッセイ入門」教室に通い始めたのは、10年前だった。「小学校も卒業できなかったので、最初は辞典の引き方も分からなかった。文章もどう書いていいのか、本当に困った。字は子供みたいで、人前に出せるようなものではなかった」。 しかし、紡ぎ出す一文は、厳しい時代を懸命に生きた家族のひたむきな姿を映し出し、人の心を揺り動かす。6年間、安さんを指導してきた宮下展夫講師も「安さんの文章には、心の優しさと同胞への熱い思いが感じられ、読者を引きつける」と絶賛、「是非本にした方がいい」と勧めてくれた。 教室の多くの日本の友人らが、何百枚のワープロ打ちを引き受けてくれた。周りの人々に支えられ、自叙伝「海をわたった家族」を自費出版したのが5年前。この本を読んで感動した読者の輪が広がり、出版社の目に止まって、今回、碧天舎から刊行されたのだ。自費出版した時、ある日本の女性が巻紙に感動をこう綴って届けてくれた。 「…いい本です。ご両親、あなた、すべての人たちが一生懸命生きてきた、その思いがこちらの胸に清らかな水の流れのように伝わってきます。深く頭が下がります。…今苦労の分の大輪の花が咲いています。おめでとうございます」と。(安順伊著)(粉) [朝鮮新報 2004.5.28] |