top_rogo.gif (16396 bytes)

〈本の紹介〉 「日本帝国主義の朝鮮侵略史」

 遠からず朝・日国交正常化のための会談が始まるであろうが、両国民と近隣諸国の世論は、朝鮮の平和、東北アジアの安全保障につながるものとしてこれを歓迎している。

 このたび、朝鮮の朴得俊博士編「日本帝国主義の朝鮮侵略史(1868〜1905)征韓論台頭から乙巳五条約(保護条約)まで」が在日の梁相鎮氏によって翻訳、出版されたのは、時宜をえている。平壌共同宣言の基底にあるのは過去の清算問題であるが、それは近、現代における両国の不幸な歴史を直視し、正しい歴史認識を深めることと密接に関わっているからである。

 徳川260年間、平穏に続いてきた両国の関係が一挙に破られるのは、明治政府が出現してからである。

 本書でも解説されているように「国権拡張」「富国強兵」を掲げた明治政府の対朝鮮政策は、侵略的な「征韓論」から始まった。日本は、清日、露日の2つの大きな対外戦争を遂行するが、その戦争目的は、清、露を駆逐、朝鮮を勢力範囲、植民地化することであった。

 総督府による実験的な植民地支配が始まる1905年の「保護条約」は、本書が指摘するように、何らかの外交的交渉によるものではなく、全く力づくの強要によるものであった。

 経済力の弱さを軍事力で補いながら強行された対朝鮮政策は、米と産業のねこそぎ収奪、「東学乱鎭圧」の名でなされた、大虐殺などに見られるように苛酷をきわめた。

 日本公使の指揮で、韓国の王妃を惨殺した「閔妃暗殺」という国家犯罪について日本の学生は、ほとんど知らない。日本の朝鮮に対する植民地支配の事実すら知らないものが多いという。

 「朝鮮脅威論」がまかり通るのは、昨今の日本の政治風土であるが、豊臣秀吉の「朝鮮征伐」はさておき、近、現代において朝鮮を侵略し、はかりしれない不幸と苦痛をもたらしたのは、日本軍国主義であって、朝鮮が日本を侵害し、脅威を与えた歴史はかつてない。

 ヨーロッパでドイツが信頼をうけている要因の一つは、ナチスドイツ、ヒトラーの罪悪について、かつて侵略を受けた、周辺諸国と歴史認識を共有していることである。

 歴史的、地理的に深い関係にある朝・日両国が、いつまでも不毛の敵対関係を続けても、平和と安全保障にとって得るものはない。

 平壌共同宣言を実践するうえで重要なことは、誠実に歴史認識を深め、相互理解することであるが、本書はその一助となるだろう。(朴得俊編、梁相鎮訳)(白宗元、近代史研究家)

[朝鮮新報 2004.6.9]