「朝鮮名峰への旅」(3) 山腹登るキバナシャクナゲ、天池湖畔で花は最高潮に |
冬枯の白頭山は、荒涼とした世界であった。 しかし春の訪れとともに雪が消え、芽吹きが始まると、景色は一変する。豊かな色彩あふれる世界へと変貌をとげる。 初夏の季節、6月下旬から7月上旬にかけての白頭山は、キバナシャクナゲの花一色におおわれる。キバナシャクナゲはまさに、白頭山を代表する花の1つである。 無頭峰は頂上付近が大きく開けており、白頭山全体を眺めるのに、うってつけの場所にある。なによりも良いことは、車道沿いにあるために、ひと息で展望台に立てることである。 白頭山の撮影に入ると、真っ先にこの展望台に登る。すると白頭山はいま何を撮ってほしいのか教えてくれる。いつもここで撮影プランを練っていた。 7月の初旬、白頭山を訪れると、初夏のさわやかな風が吹きわたっている。大陸のつけ根に位置している白頭山は、この季節、大陸の乾燥した高気圧におおわれることが多い。朝夕は寒くてジャケットが必要であるが、日中ともなるとじりじりと太陽が照りつける。しかしひとたび日影に入ると、さわやかな風が吹き抜ける。青空が美しい。日本の秋の空のように、高く澄んだ明るい青空が、広々と広がっている。 車道から、カラマツ林に踏み込む。前回訪れた時は、林床にはくすんだ緑が広がっているだけであった。今そこには、薄い黄色の花がびっしりと咲いている。黄色いじゅうたんのようなキバナシャクナゲは、日を追うにしたがって山腹を登っていく。カルデラ内の天池湖畔に達した時に、花は最高潮となる。 キバナシャクナゲの花が散る頃、雷鳴とともに、バケツをひっくり返したような猛烈な雨が降った。天池の湖面が1日で1メートルも高くなるような、すさまじい雨だ。梅雨明けを告げる降りである。いよいよ夏本番だ。(山岳カメラマン、岩橋崇至) [朝鮮新報 2004.6.17] |