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〈本の紹介〉 日本論

 まれにみる面白い対談。みなが右倣いする日本社会の習性を蹴破って、異議を唱え続ける「二人衆」とは今をときめく政治学者・姜尚中、反骨の評論家・佐高信。

 この二人が日本のすべて、政治、経済、思想、文学を熱く語り、政治家、官僚、財界をバッサ、バッサと小気味良く切っていく。

 とりわけ圧巻は戦後最大の思想家と言われ、日本各界各層に根強い影響力を及ぼす丸山真男についての言及。

 姜「丸山さんの軍隊体験はたいへんな複雑なものだったんじゃないかと思います。ところが、丸山さんは朝鮮半島に行って重い体験をしたはずなのに、禁欲したのか体験を完全に瀘過したのか、その時のことについては何の言及もないんです。初めて戦争体験をもった地域についての肉声がない」

 佐高「いい意味でも悪い意味でも、丸山真男というのは精神の貴族ですよね。自分のスタイルをもって批判する。ただ、泥まみれにはならない」

 と、いうような縦横無尽、歯にきぬ着せぬ旺盛な批判精神がこの対談の最大の魅力。「国家主義という20世紀の『社会小児病』に羅患したエリートたちや世論の、ほとんどビョーキのようなスローガンや情緒のごった煮が、何か新しい『改革』的なイメージをまきちらしている様は異様としか言いようがない。それは再び、新しい世紀に犯罪と愚行の記憶を残すことになるだろう」(「あとがき」=姜尚中)という鋭い問題意識が日本とアジア、世界を論じる核となっている。

 夏の夜に是非お勧めしたいエキサイティングする一冊。(姜尚中、佐高信著)(粉)

[朝鮮新報 2004.6.23]