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〈みんなの健康Q&A〉 不眠症(上)−睡眠と睡眠薬

 Q:睡眠は1日にどのくらいとるのが良いのですか?

 A:健康を維持するためには「十分な休息や睡眠」が必要です。しかし最近では「仕事や勉強が忙しくて、十分な睡眠時間がとれない」といった理由による睡眠不足や、「眠りたいのに眠れない」「眠っているのに、寝た気がしない」等といった、睡眠に関する悩みを抱える人が増えています。

 厚生労働省によると、およそ5人に1人は不眠に悩んでいるという調査結果が出ています。しかし、実際に不眠を理由に病院やクリニックを受診するのは、そのわずか8%にすぎません。不眠に悩む人は「眠れないくらいで病院に行くのは…」と受診を躊躇する人が多く、まだまだ「病院の敷居」が高いのが現状です。大抵の人は悩みながらも、そのまま不眠を放置するか、睡眠薬代わりに寝酒を代用している様です。不眠症は極ありふれた、軽視され易い身近な病気と言えます。

 Q:最近、薬局などでも睡眠剤を購入できるようになったと聞きますが。

 A:昨年4月に、初めて街の薬局で買える(OTCと呼びます)睡眠剤が発売されました。エスエス製薬の「ドリエル」(成分名:塩酸ジフェンヒドラミン)という薬です。値段は成人1回2錠を3回分で1000円と高価ながら、ストレス社会ということもあってか都市部を中心によく売れています。この睡眠薬、当初の販売予測の4倍を優に超す、大ヒット商品となっています。「ドリエル」の主成分である塩酸ジフェンヒドラミンは特に目新しいものではなく、市販の風邪薬等にも含まれている、抗ヒスタミン作用のある薬なのです。この抗ヒスタミン薬を飲むと、くしゃみや鼻水、かゆみ等といったアレルギー症状が抑えられる一方で、眠気を催すという副作用(市販の風邪薬を飲むと眠たくなるのはその為です)が生じます。この副作用を逆に利用して市販の睡眠剤にしたのが「ドリエル」です。

 Q:睡眠は必ずとらなくてはいけないものですか?

 A:睡眠についての基礎的な知識を少し整理してみましょう。睡眠のメカニズムは、実はまだよく解っていません。睡眠を取らなくても、横になって身体を休めていれば、肉体的な疲労は回復するはずです。しかし、脳には睡眠が必要で、重症な睡眠不足になると記憶の障害や注意力の低下が起きたりします。ある実験では強制的に人間を寝かせないでおくと幻聴や幻覚等が出現し、最後には死んでしまうと言われています。睡眠は身体の疲労回復のために必要ですが、それ以上に「脳を休ませること」が重要なのです。
脳は膨大な情報を処理し、全身に色々な命令を出しています。朝から晩まで色々な作業をしていると疲労や老廃物が次第に蓄積されるため、定期的に休ませることが必要となるのです。この時睡眠が大きな役割を果たします。

 Q:夢を見るのは?

 A:睡眠には「ノンレム睡眠」と「レム睡眠」の2つの相があり、ノンレム睡眠から始まり、その後にレム睡眠へと移ります。ノンレム・レム睡眠のサイクル(約90分位です)は一晩のうちに4〜5回繰り返されます。

 睡眠には身体と脳を休ませる役割があり、ノンレム・レム睡眠が「身体の眠り」と「脳の眠り」の2つの相となるのです。ノンレム睡眠と呼ばれる「脳の眠り」は、文字どおり脳も寝ている深い眠りのことを言います。一方レム睡眠の時は、筋肉(骨格筋)の緊張は完全に消失し、身体は寝ているのに脳は起きている浅い眠りのことで、このレム睡眠中に何かの拍子で目が覚めると、「意識はあるのに体が動かない」という、いわゆる「金縛りの状態」となります。

 またこの時は脳が起きている状態で、この時には夢を見ていることが多いのです。ですから、このレム睡眠中に何かの拍子で目が覚めると、直前まで夢を見ていたわけですから夢を鮮明に覚えているのです。

 Q:「夢を覚えているか、いないか」はレム睡眠中に目が醒めたかどうかで決まるということですね?

 A:そうです。ですから「昨日は夢を見なかった」のではなく、夢を見たのに覚えていないだけなのです。また「歳をとると夢を見なくなる」と言われますが、これは歳をとると夢を見ている睡眠(レム睡眠)が減少するためです。そしてレム睡眠の時に記憶の整理をしているとも言われています。

 睡眠中には成長ホルモン等も分泌され体調を整えたり、身体の疲労を回復したりしています。生まれたばかりの赤ちゃんは1日の大半を寝て過ごし、成長するにしたがって睡眠時間は徐々に減少していきます。時々「若い頃は○△時間位は眠れたのに…」と言っては不眠を訴えられる方がいますが、これはそれぞれの年代によって必要とする睡眠時間が変化するからです(もちろん、個人差はあります)。次回は不眠について少し説明してみたいと思います。(神奈川県川崎市高津区溝口3−8−3 TEL 044・844・3316)

[朝鮮新報 2004.6.25]