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高麗人参余話(41)−未病の薬

 漢方医学の特徴は予防医学であり、病気を発生する前の段階でくい止める「未病先防」の考え方を特徴とする。

 人蔘は「未病の薬」と言われる。「未だ病まざるを治す」こと。つまり、実際の病気になる前に病気にならない健康で丈夫な体をつくるという漢方の概念に一番適した生薬なのである。 抗生物質の登場でもなかなか治らない成人病の治療などに漢方薬が注目されている今、東洋医学と西洋医学がそれぞれの利点を生かしあい、発展しようとしている。また、新薬に生薬を配合して体にやさしい薬をつくろうとしている動きもある。

 人蔘は大きな病気や手術をした後、体力が衰えている時や、疲労や慢性の虚弱体質、体力が低下している時に足りない元気を補い、胃や腸など消化器の働きを健やかにして、神経、精神を安定させ、体の中の水分である「津液」を生じる(生津)一方、免疫力を高め、体を温かくする効能がある。

 健康な状態では形のない「気」の流れが順調であるが、ストレスや強い感情の変動によって「気」の滞りが起きると気滞から精神異常や張り、こり、痛み、神経性胃炎などの多くの病気が生じる。くよくよしたり、ひとつのことにこだわって考え込んだり心配や暗い気持ちは「気」の停滞を生む。人蔘はこれらを補う。

 漢方医学では、病気を防ぎ、体を健康に保とうとする力、つまり生命力、抵抗力を「生気」と呼んでいる。また、生気のバランスを乱し、病気をもたらすものを「邪気」と呼ぶ。

 生命力、抵抗力が低下した場合に病気が起こり、邪気が生気よりも強すぎる場合に病気が起こる。「気」は寒、冷、温、熱の4種と中庸の平からなっている。例えば「気」が温であると言えば「冷え性」などに適当であることを示している。人蔘は温薬である。

 漢方薬の中で「気」を調整し、「気」の病を調整する方剤(漢方の処方)を一般に「理気剤」と呼んでいる。(洪南基、神奈川大学理学部非常勤講師)

[朝鮮新報 2004.6.25]