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〈高句麗壁画古墳世界遺産登録〉 かげがえのない地球の自然と文化財後世に

疾駆する騎馬武者

 世界遺産とは、人類の英知と人間活動の所産をさまざまな形で語り続ける顕著な普遍的価値をもつ遺跡、建造物群、モニュメントなどの文化遺産、そして、地球上の顕著な普遍的価値をもつ地形、地質、生態系、自然景観、生物多様性などの自然遺産である。

 これらを保護、保全することにより、かけがえのない人類共通の遺産を後世に継承していくことを目的に、1972年のユネスコ総会で採択された「世界の文化遺産及び自然遺産の保護に関する条約」(通称 世界遺産条約 2004年6月現在の締約国は178カ国)に基づき、ユネスコの「世界遺産リスト」に登録されている。

 世界遺産条約とは、地球上のかけがえのない自然遺産や文化遺産を、人類全体の財産として、損傷、破壊等の脅威から保護、保存することが重要であるとの観点から、国際的な協力および援助の体制を確立することを本旨としている。

安岳三号墳(黄海南道)

徳興里古墳(南浦)

 ユネスコの「世界遺産リスト」に登録されている世界遺産の数は、現在、129カ国の754物件。遺産種別では、カナダの「カナディアン・ロッキー山脈公園」、ロシア連邦の「バイカル湖」などの自然遺産が149物件、エジプトの「ピラミッド」、カンボジアの「アンコール」などの文化遺産が582物件、自然遺産と文化遺産の両方の登録基準を満たすペルーの「マチュ・ピチュの歴史保護区」、中国の「黄山」などの複合遺産が23物件である。

 これらのうち、地震、火災、水害、戦争、紛争、それに無秩序な開発行為などによって緊急の救済措置が求められる「危機にさらされている世界遺産リスト」には、アフガニスタンの「バーミヤン渓谷の文化的景観と考古学遺跡」など、 29の国と地域にわたって自然遺産が18物件、文化遺産が17物件の合計35物件が登録されている。

安岳三号墳に描かれた王妃

水山里古墳壁画に描かれた長いチマを着た王妃

江西中墓に描かれた朱雀(南浦)

 「韓国」、日本、北朝鮮の世界遺産リストへの登録状況を国別に見ると、「韓国」は、1988年9月14日に世界遺産条約を締約し、これまでに、「石窟庵と仏国寺」「八萬大蔵経のある伽耶山海印寺」「宗廟」「昌徳宮」「水原の華城」「慶州の歴史地域」「高敞、和順、江華の支石墓」などの文化遺産7物件が登録されている。

 日本は、1992年6月30日に世界遺産条約を締約し、これまでに、「白神山地」「屋久島」の自然遺産が2物件、「法隆寺地域の仏教建造物」「姫路城」「古都京都の文化財」「白川郷・五箇山の合掌造り集落」「広島平和記念碑(原爆ドーム)」「厳島神社」「古都奈良の文化財」「日光の社寺」「琉球王国のグスク及び関連遺産群」などの文化遺産が9物件の合計11物件が登録されている。

 朝鮮は、1998年7月21日に世界遺産条約を締約しているが、まだ、登録物件はないが、今月、中国の蘇州で開催される第28回世界遺産委員会で、日本の「紀伊山地の霊場と参詣道」などとともに「高句麗壁画古墳群」の登録が期待されている。

 「高句麗壁画古墳群」の登録が実現すれば、今後5〜10年以内に世界遺産に登録申請予定の暫定リスト記載物件である「平譲の史跡」「金剛山と周辺の史跡」「妙香山と周辺の史跡」「開城の史跡」「球場地域の洞窟群」などの登録にも弾みがつくとともに、文化面や観光面からの交流が国交正常化への契機になる可能性を秘めている。(世界遺産総合研究所、古田陽久)

 (参考文献)
 「世界遺産ガイド−北東アジア編−」
 (2004年3月 シンクタンクせとうち総合研究機構 発行)
 「世界遺産データ・ブック―2004年版−」(2003年8月 〃 )

[朝鮮新報 2004.6.30]