〈みんなの健康Q&A〉 不眠症(中)−不眠の原因 |
Q:平均的な睡眠時間はどれくらいですか? A:20〜30歳代の成人の睡眠時間は平均7時間くらいなのに対し、60歳代になると約6時間と減少します。つまり、睡眠時間は生まれた時をピークに年齢とともに減少するものなのです。 睡眠は生涯を通じて量、質ともに変化するものなので、歳をとると朝早く目が覚めるようになったり、眠りが浅くなることは正常なことなのです。老化現象は睡眠から始まると言ってもいいくらいです。 また、睡眠は生理的なもので、人の意志でコントロール出来るものではありません。 たとえ不眠が続いたとしても、限界を超えると自然と眠りにつくようになっています。睡眠は身体はもちろん、脳が休息をとるための大切な時間なのです。繰り返しになりますが、不眠とは心身の健康を維持するために必要な睡眠が、不足している状態のことを言い、その結果「睡眠が量的あるいは質的に不足することで、本人が苦痛を感じたり、社会生活に支障をきたしたりする状態」を私たち精神科医は「不眠症」と呼んでいます。 量よりも質の方が大切で、たとえ睡眠時間が5〜6時間しかとれなくても、本人が日常生活を普段通り(日中に怠さや眠気を感じない)に過ごすことができれば、それは「不眠症」とは呼びません。 Q:不眠の原因にはどのようなことが考えられるのでしょうか? A:睡眠は1番のストレス解消法ですが、何かの原因で眠れなくなるとストレスの解消が上手にできなくなり、疲労が蓄積していくのです。慢性の不眠症を放っておくと事故やケガ、心身の病気の危険因子となりえます。「不眠」は精神科の外来では患者さんの主訴(自分で感じる症状)の代表であり、とてもありふれた症状なのです。 「24時間社会」とも呼ばれるようになり、テレビ、インターネット、レンタルビデオ等や、交代勤務者(例えば、コンビニ等の24時間営業の仕事)が増加し、子どもや学生までもが遊びや勉強のために夜遅くまで起きていることが珍しくありません。その結果、現代人は睡眠時間が短縮し不規則になってきています。 Q:具体的な症状は? A:不眠と一口に言っても、人により症状はさまざまです。1番多いのは「布団に入ってもなかなか寝付けない」というタイプで、「夜中に何度も目が覚めてしまう」「夜が明ける前に目覚めてしまう」「時間的には十分寝ているが、朝、目覚めても寝た気がしない」等のタイプもあります。 例えば日頃よく眠れる人でも経験する、ほんの数日から2〜3週間で治ってしまう短期間の不眠のタイプは、原因として不安、緊張、仕事上のトラブル、旅行等の環境変化に伴うストレスで起こり易く、短期間の治療で比較的に良くなることが多く、逆にこれといって心当たりがないのに眠れない慢性的(3週間以上続く)な不眠のタイプは女性や、物事をくよくよと考える性格の人に多く、加齢、うつ病等も慢性化の原因と考えられています。 また、昼と夜の逆転生活者に多いのが「リズム障害」です。身体が昼だと思っている時間帯は眠気が非常に弱くなるものです。海外旅行で、日本で昼である時間帯が夜になってもすぐには眠れません。夜眠れなくて、朝寝坊してしまい、翌日もまた寝つきが悪くてという悪循環を繰り返すこともよくあり、これらは一日の規則正しい生活リズムが乱れて起きていると考えられます。 Q:眠れないとき、お酒を飲んで眠気を誘うことがありますが。 A:みなさんの中には「眠れなきゃ酒を1杯飲めば良い」と思われる方もいるでしょう。「寝酒」という言葉があるように、昔からお酒は睡眠薬代わりとして広く用いられてきた経緯があります。 ビール1缶程度(注・決して多量ではありません)のアルコールは食欲を増進させ、疲れを癒し、心地よい眠りを得られる人にとっては、お酒は人生を楽しみながら生活の質(QOL)を高める「百薬の長」でしょう。多少医学的に言えば、アルコールは中枢神経系(大脳)に対して抑制的に働き、沈静効果を示すため、心配事や不安、緊張感が強い時には、寝る前の適量のアルコールが、あなたを心地よい睡眠に導いてくれるでしょう。 しかし、飲酒を続けると「耐性」と言って、いわゆる「酒に強く」なってきます。次第にその効果が得られがたくなり、その結果以前の効果を得るために酒量が増え、アルコール依存症になったり、アルコール性肝炎に至る危険性もあるのです。そのような理由から、アルコールを睡眠薬の代わりするには欠点が多いので、眠るためにアルコールを常用することはお勧めできません。それではどうしたら良いのでしょうか? 次回は対処法等について説明したいと思います。(神奈川県川崎市高津区溝口3−8−3 TEL 044・844・3316) [朝鮮新報 2004.7.2] |