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ドキュメンタリー映画「花はんめ」上映始まる、在日2世金聖雄監督が映画化

 在日同胞が多く暮らす町・神奈川県川崎市桜本。そこを舞台に生きるハンメたちの日常を4年間追い続けたドキュメンタリー映画「花はんめ」が完成した。様々な人生航路の末に、手にした穏やかな日常。「いまが一番幸せ」と話すハンメたちの弾ける笑顔が観る者の心まで優しく潤してくれる。6月20日から日本各地で上映されている。

 映画のタイトルは、いつも花を髪にさして踊るあるハンメの姿でもあり、監督の金聖雄さん(40)の、たくましく生きてきた在日1世女性たちすべてに捧げる愛情の表れでもある。  

 物語の舞台は同区の路地裏の狭いアパートの一室。  

 ここに「清水の姉さん」と呼ばれる孫分玉さんが暮らす。そこにいつも集うのは、やはり1世のハンメたち5〜6人。キムチとナムルが並ぶ食卓を囲んで、毎日、毎日楽しい語らいが続く。下ネタ話もあれば、男の悪口もありで、何でも笑いの元になるところがおかしい。みんなで外出すれば道端の花を摘んで、髪にさし、踊り出す。スーパーの水着売り場で試着して、おどける姿は乙女のようでもある。そして、いざ60年振りにプールに入って大はしゃぎ。「いまの輝きを撮りたかった」という監督の思い通り、スクリーンいっぱいにハンメたちの「遅咲きの青春の笑顔」が映し出される。

 観る方も一緒に笑って、泣いて、どこかしんみりする映画である。

 監督はこう語った。「強制連行、従軍慰安婦などの過去を切り口にして、これまでは在日が語られることが多かった。私の母も苦労の末に77年の生涯を終えた。母や在日1世たちが歴史の渦に飲み込まれながらも、日本という舞台で確かに生きた、生きているという証しをどうしても残してあげたかった」。

 映画はそうした監督の温かいまなざしが溢れている。80歳をとうに越えたハンメたちに過酷な体験談や悲しい思い出がないはずはない。この映画に出てくるハンメの中にも、徴用で渡日してきたハンメもいるし、若い頃夫と死別し、子どもを女手ひとつで育てあげたハンメもいる。でも、映画は苦労を乗り越えたハンメたちのいまをとらえ、過去を説明したり、語ったりしない。

 「さまざまな体験があったからこそ、いまの力強さや他人への優しさと底なしの明るさがあり、何気ない日常に幸せを感じることができると思う。映画を通じて、ハンメたちの深い愛、広い懐に触れてほしいと思う」と金監督は話す。

 教育を受けたわけでもなく、がさつなところ、どこかうるさいところもある。でも、それが何だと言うんだろう。ハンメたちの自分より他人をまず大切に思う、あふれるばかりの個性。何とチャーミングで魅力的であろうか。

 映画であるハンメが言った。「いま、心にシワがないの。本当に楽しいよ」と。国を奪われ、故郷を追われ、日本で懸命に生きてきたハンメたち。屈せず生きたその姿が美しく、そしてまぶしい。(朴日粉記者)

 (当日券1500円、前売り1300円、問い合わせは「花はんめ上映委員会」TEL 03・3355・8702)

[朝鮮新報 2004.7.5]