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〈みんなの健康Q&A〉 不眠症(下)−不眠の対処法

 Q:不眠の対処法について教えてください。

 A:まず「無理に眠ろうと思わない」ことです。眠ってはいけない時には、つい居眠りしそうになるのに、眠らなくてはいけないと思うと、どんどん目が冴えてくるというのが、万人が経験することです。例えば「遠足の前夜、リュックサックに持っていく物を詰め、いざ布団に入っても眠気がおきず、焦って朝まで起きていた」なんて経験はありませんか?

 基本的には睡眠は、放っておけば必要なだけ身体が取ってくれるものです。ですから、よい睡眠が取れる環境を整えることは重要ですが、ベッドに入った後は、無理に眠ろうと意識しないことです。 目を閉じて静かにしていれば、身体の安静は取れるのですから、ことさら眠る必要はないのだと、気持ちを楽にすることが重要です。

 それから適度な運動は、身体の疲れと精神的なストレスの発散になり睡眠を促進します。しかし、寝る直前の激しい運動は、かえって神経の緊張を高めて逆効果になることもあります。同じように、眠る前に精神的に緊張したりすることも避けるべきです。ストレスに心当たりのある方は極力減らし、リラックスするように努めてください。「この忙しい時代にストレスを減らすことなどできやしない」とおっしゃる方もいるでしょう。ですが、同じストレスでもその受け止め方や考え方によって負担のかかり具合は大きく違ってくるものです。

 その他の方法として例えば、ぬる目のお湯に入浴するとか、照度を月明かり位にする(寝室の環境も大切)。夜、寝られないからといって長い昼寝(30分以上)はとらないようにしましょう。布団に入って30分位しても眠気をもよおさなければ、無理に布団の中に留まらず、1度布団から離れてみるのも良いでしょう。できるだけ毎日決まった時間に起床するのも大切です。これらの方法を試されても効果が現れなかったら、専門の医師に相談する事をお勧めします。

 Q:慢性的な不眠の場合はどうしたら良いのでしょうか?

 A:不眠治療の前に、まず元々ある病気があればその治療を最優先します。そして慢性的な不眠には積極的に医師に相談して睡眠薬を服用してみてください。

 不眠症に対する薬物治療の中心はベンゾジアゼピン系睡眠薬と呼ばれるグループが多く使われています。この薬は他の睡眠薬と比べると副作用が少ないのが特徴で、現在では10種類以上が発売されています。効き方もさまざまで、不眠のタイプ別に使い分けられています。例えば、寝付きの悪いタイプには早く効く睡眠薬を使い、寝付きは良いが夜中に目覚めてしまうタイプには、ゆっくりと長く効く睡眠薬を使います。つまり「足らないところを補う」ことが基本なのです。

 Q:睡眠薬は癖になると聞きますが。

 A:不眠症は、それだけで死んでしまう病気ではありませんが、生活の質を悪くする病気です。確かに「睡眠薬」と聞いて不安を感じられる方が多く、「癖になる、副作用が怖い、呆けてしまう」等の印象をもつ方が大半でしょう。

 しかし、それは大きな誤解です。患者さんの中には「不眠も怖いが、睡眠薬も怖い」というジレンマに陥り、不安が高まる結果、不眠も増悪してしまう、と言うこともあるのです。薬の乱用は慎むべきですが、上手に使えば睡眠薬は非常に有用な薬です。むしろ、「眠れる」という自信をもてるまで睡眠薬を毎晩服用し、眠れる自信がついたら医師と相談しながら徐々に減量することが大切です。

 睡眠薬を服用している患者さんの多くは、やや神経質なところもあり、医者が処方した量よりできるだけ少なく飲んで寝ようと努力する人もいます。しかし無理に自分で減量したりすると、それが新たなストレス(眠れるかしら?)となり、不眠が悪化する事も少なくありません。もともと不眠症は性格や環境と密接に関係しており、良くなったり悪くなったりを繰り返す事が多いのです。ですから変化する症状に応じて、薬の量、種類の調整がまめに必要となってくるのです。「最近は良く眠れるから」といって、ある日を境にぴたりと服薬を中断したりすると「反跳性不眠」といって、以前より強い不眠となる事があるのです。ですから睡眠薬を減らす時には、例え調子が良い時でも医師と相談して行うことが大事です。逆に眠れなければ医師に相談し、薬を元の量に戻して次の機会を待つ位の余裕をもつことが大切なのです。

 Q:服用の際、とくに気をつける点は?

 A:睡眠薬服用時には「アルコールと睡眠薬を一緒に飲まない」「睡眠薬を飲んだら直ぐに寝る」等といった、幾つかのルールがあります。それらを守れば睡眠薬は副作用も少なく、不眠症に対して大変有効な薬です。ちょっとした環境の変化による一時的な不眠なら、まずは「ドリエル」のような市販薬を使ってみるのも良いでしょう。しかし、それで効果がない場合には専門医(精神科、心療内科)に相談されることをお勧めします。「たかが不眠症、されど不眠症」です。(神奈川県川崎市高津区溝口3−8−3 TEL 044・844・3316)

[朝鮮新報 2004.7.9]