高麗人参余話(43) 萬病通治薬2 |
中国で人蔘が文字によって記録されたのは前漢元帝(紀元前32〜6)の時で、子游の著書「急就章」の中に初めて「參」という字が記録されている。中国では薬学書を本草書と呼ぶが現在あるもっとも古い本草書は1〜2世紀頃に書かれたとみられる著者不詳の「神農本草経」である。「神農本草経」には「人蔘、味甘く微寒、五臓を養い、精神を安んじ、魂魄を定め、驚悸を止め、邪気を除き、目を明らかに、心を開き、智を益するをつかさどる。久しく服すれば身を軽くし、年を延ばす」と記されている。この表現は現代の科学から見ても何の遜色もなく、見事に人蔘の効能の核心を突いている。 高麗人蔘が人々の治療に利用された歴史は4〜5000年に及ぶ。高麗人蔘には生体の恒常性を維持するように互いに相反するような薬理成分がバランスよく混ざり、補薬としてよりよい作用を引き出している。経験的にあらゆる病気に効く妙薬、まさに「不死薬」「不老草」であった。しかし、人蔘は特定な病気の特効薬ではない。人蔘は食べることであらゆる生理機能に活力を与え、疾病からからだを守る「萬病薬」である。 特効薬とは特定の治療目的(例えばガンやエイズ、サーズなど)に対して治療する薬で即効性を期待するが、多くの場合、悪性貧血や痙攣、吐き気、脱毛、薬物中毒などの苦痛が伴う。 特効薬は病人が病を治すのを主とし、毒性も強いので長期服用は慎むべしとした下薬である。一方、人蔘は不老長寿、補血強壮、性欲亢進、疲労回復など人間にとって最上の経験薬として君臨してきた「萬病通治薬」である。「根源的に作用する薬」としてこれからもその価値は変わらないであろう。(洪南基、神奈川大学理学部非常勤講師) [朝鮮新報 2004.7.9] |