〈本の紹介〉 古代日本の輝き |
世の中のグローバル化・ボーダレス化が進行するなかで、あらためて「日本とは何か」、日本の歴史と文化を支えている「古代的精神」・「古代的要素」とは何かを考察していく。本には、「檜隈と古代文化」をはじめ、「近江渡来人の軌跡」、「北ツ海文化の再検討」、「鑑真和上と日本の文化」など、1974年から2003年までの論文やエッセイを多数収録。 付篇「現代に生きる朝鮮通信使」では、朝鮮通信使と日本の民衆がじかに交流した「民際」の史実について触れている。「(当時)幕府や各藩大名がそれを奨励したわけではない。むしろ民衆とのまじわりは禁じていた。それなのに第7回の頃から、禁令をのりこえた日本の民衆が朝鮮通信使とじかに交流したのである」。国と国のまじわりには限界がある。国益を無視した「友好」が結ばれるはずがない。しかし、「民衆の場合は自由」、「国籍やイデオロギーにとらわれない交流が結実した」と指摘する。 京都の市民団体と約30年間に渡り50回も日本の中の朝鮮文化をたずねる旅を続け、朝鮮の古代文化への関心が高まるように精力的に取り組んできた著者が、喜寿の節目にまとめた一書としても意義深い。(上田正昭著)(潤) [朝鮮新報 2004.7.21] |