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〈本の紹介〉 人を殺せと言われれば、殺すのか

 まず、タイトルにドキッとさせられる。今の日本社会の権力への無抵抗な風潮を筆者は本書を通じて鋭く告発する。米国に追随し戦争へと突き進む政府。弱者を切り捨てる経済。差別を助長する教育。そして、過去を顧みることなく朝鮮バッシングに明け暮れる。本書は、この日本社会のあらゆる病的なものを、おもに書評という形をとってあぶりだしてくれている。

 筆者は次のように訴える。「私たちは絶望だけはするまい。すれば何もかも終わる。…たとえ少数者として扱われようと、大地をしっかりと踏みしめ、人として許されぬことは許されぬのだと、声を上げていきたい」

 愚直にあきらめることなく、照れることなく正義の実現を求めていく。そして、あいまいな立場というものを認めない。非正義に対する無関心と無批判は、けっきょく非正義を容認し手を貸すことにしかならない。筆者の主張は明確でありながら重い。

 ジャーナリストとして豊富な取材活動を続けてきた筆者が書評に取り上げた本はどれも良書で、本書は読書への良き道案内ともなっている。とくに序章「『坂の上の雲』をめぐって」は、読書と歴史観の関係を解き明かす秀逸の文章だ。(斎藤貴男著)(基)

[朝鮮新報 2004.7.21]