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岡部伊都子著、「朝鮮母像」を読みながら

キミワルイ コワイ
三歳の男の子は 目が据わり
離れたいのに 立ちすくみ
爪先まで こわばって
一瞬して
オカアサン オカアサン
ダレガ コンナコトシタノ!?

電柱に女の人が吊されていて
長い髪が まっすぐに垂れて
頭が まるごと うなだれていて
両の手は 後ろ手にしばられて
血が 口から溢れていて
地面に滴り落ちると 花になっていて
それは 沖縄の四季を咲く扶桑花で

戦争の みにくい むごたらしさ
いのちの おごそかな うつくしさ
一瞬のうちに 一枚の絵に
生きる世の理不尽を見ぬいた男の子は
在日朝鮮人の父と日本人の母の敬愛の果実
この澄んだ涙の瞳を みつめてほしい
政治指導者よ 日本の同胞よ

哀しむこころを 決起する良心を
蘇らせてほしい あなたのいのちに

ファッションよ ナウイ トレンディと はしゃぐうち
ファッショ闊歩する暴乱の現実
母国への哀しみ いとしさ ハングルで
詩に刻む尹東柱は獄死させられ
憲法の前文 第二章 第三章を消せば
蘇る大日本帝国
わが祖国 粗暴の政府 蛆虫議員
粗国 蛆国と書きたい哀しさ
被害のみ憶えて加害の記憶喪失か
真実の目おぼろにさせられ
くにたみの礎の憲法を打ち砕く
政府よ 愚挙は犯罪と知れ
殺戮と破壊の果てに
人道だ復興だと号令する民主帝国

(2004.6.5 須田 稔、立命館大学名誉教授)

[朝鮮新報 2004.8.2]