〈みんなの健康Q&A〉 亜鉛欠乏症−予防と対策 |
Q:最近は、若い人で味覚障害を訴える人が多くなったと聞いておりますが、その原因は? A:味覚障害の原因は亜鉛欠乏とさまざまな病気(糖尿病、甲状腺疾患、胃腸障害、肝疾患)や薬剤による副作用などで、薬剤では精神安定剤、睡眠剤、降圧剤などの亜鉛の吸収を阻害する薬剤、食品添加物にも亜鉛の吸収を阻害する物質があるといわれております。症状の発現は味を感ずる舌の味蕾の数が少なくなっている高齢者に生じやすくなりますが、最近では味覚障害を訴える患者は若い人に多くなっているといわれております。病気を持たない若い人が亜鉛欠乏になるということはよほど亜鉛を含まない片寄った食生活をしているものと思われます。 最近のテレビ報道で、地球上では海の中に初めて生物が生まれ、この生物が、海より陸にあがって生活ができるようになったのは脊椎骨が形成されるようになったためであると報じられておりました。脊椎骨をはじめ四肢の骨には、ミネラルや元素が多量に含まれており、そのために生物は地上で海と同様の生活が維持できるようになったものと思われます。しかし、この骨のミネラルや元素は無限なものではなく、常に補充が必要であります。地上ではそれを食べ物の中から補充しなければなりません。 第二次大戦後、国民の生活が豊かになり、何でも新しいものはすべて良いもので、古いものは悪いものであるとの考えが、人々にさまざまな影響をもたらしております。食生活において戦前、日常に用いたミネラルや元素をたくさん含む岩塩や粗塩は湿気をもたらすとのことで精製塩を用いるようになりましたが、この精製塩を牛に与えるようになったところ、牛が不妊症になったとの話があります。細胞の分裂増殖の盛んな精子形成に欠くことのできない亜鉛が男性に欠乏しているのか、最近男子の精子量が減少したとの報道があり、牛の不妊と同様に亜鉛欠乏が原因の1つかも知れません。また、ブタをコンクリートの上で飼育するようになってから原因不明の突然死が起こったとの話を耳にします。テレビなどで土を食べている動物の光景がしばしば見受けられますが、この動物の行動は本能的なもので、体の中で元素などが不足すると土を食べるようになり、コンクリート上で飼育されたブタの突然死は、土から必要な元素の供給がなくなったことが原因と思われます。 このような神秘なことは人間においても認められます。 母乳の大切さは雑誌等で良く知られておりますが、母乳中には子どもが生まれて約1カ月の間は、亜鉛が非常に多く、とくに出生後1週間の母乳の亜鉛含有量は通常の約8倍も多く含まれ、当然母親の血中亜鉛濃度は低下しております。この母乳中の亜鉛の増加は新生児の発育にとって必要不可欠の元素であるために先祖から母親に受けつがれ備わった働きと考えられます。 トルコのある地方で無脳児がたくさん生まれ、調査により、その土地は亜鉛がきわめて少なく、食物からの亜鉛の摂取が少なく、母親が亜鉛欠乏になった結果と報告されております。元素の大切さを亜鉛を代表として話しましたが、われわれは先祖から受けつがれた食生活を無視し、美容など目先のことで食生活を変えることは必ず病気ということで返ってくることも覚悟しなければなりません。 Q:味覚障害は人間が、亜鉛欠乏症状のうちで、最初に出る症状だといいますが? A:日本大学名誉教授、現富田耳鼻咽喉科医院の富田寛先生は長年味覚障害について研究され、多数の著書を出しておりますが、味覚障害は人間において、亜鉛欠乏症状のうちで、一番最初に出る症状であると述べております。 離乳直後のラットを用いて実験を行って見ますと、亜鉛を含んだ餌で飼育したラットの体重は180グラムに対し、亜鉛を含まない餌で飼育したラットは約半分以下の体重88グラムで、さらに著しい脱毛を示す皮膚炎が生じておりました。亜鉛は細胞の分裂や再生に重要な元素であることから生体の発育に必要不可欠の元素で、母体での胎児の発育に非常に大切であり、乳児用の市販のミルクには必ず亜鉛が含まれております。 富田先生によれば、味覚障害は早期治療が大切であると言っております。味覚障害に対する亜鉛治療の効果は発症6カ月以内では70%以上と比較的良好ですが、1年以上経過した場合は50%に低下したと言われております。欧米での亜鉛摂取量は1日15mgで、最近の人々の亜鉛摂取量は1日9mgと少ないがさらに少なく、若い女性は1日6mgといわれております。亜鉛欠乏は血液検査により簡単に調べることができます。味覚障害が亜鉛欠乏による場合は亜鉛製剤やビタミンB2やB12の投与により改善いたします。薬剤投与による味覚障害の場合は薬剤の中止や変更が必要です。 Q:味覚障害の予防は? A:味覚障害の予防には日ごろの食生活が大切です。日本では亜鉛は米から取っておりましたが、最近では3食米を食べない人が多くなっており、また若い人たちは偏食が多く栄養が偏りがちになりなり、さらに亜鉛吸収を妨げる食品添加物などを多く摂っていると考えられます。 亜鉛を多く含む食品は、魚介類では、カキが一番多く亜鉛を含み、食品中でも最多で100g中40mg含むとも言われおります。そのほかにイカ、かずのこ、煮干し、しらす干、さざえ等で、海藻類では、のり、わかめ、干しひじき等、肉類では、牛レバー、牛肉、豚肉、ソーセージ、ハム等、豆類では、小豆、納豆、豆腐、いんげん豆等、穀類では、玄米、そば等、種実類では、カシューナッツ、アーモンド、いりごま等、野菜類ではパセリ等に多く含まれております。 [朝鮮新報 2004.8.6] |