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〈本の紹介〉 「東アジアと東北」

 本書は東北を東北という空間の中で完結させるのではなく、東アジア世界というひろやかな歴史空間から地域や国家の問題を考え、東北史像を問い直すことを課題とするものである。東北という地域から東アジアの人々との交流、友好の歴史をたどり、それが地域の歴史に及ぼした影響を掘り起こし、東アジアからの視座に基づく東北の歴史の再構成への試みとして重要な諸課題を提起するものである。

 とりわけ興味深いものが、「東北における渡来系の人々」「平泉政権と東アジア」などと共に「賢治と多喜二は朝鮮人をどう描いたか」(佐藤守)の小論であろう。 

 日本文学史に特異な光彩を放ち、今も燦然と輝いている2人の強烈な文学的個性は、多くの読者を持ち続け、国の内外に大きな文化的影響を与えている。

 この2人が、当時の日本帝国の非民主的軍国主義政策下にあって、不当に差別迫害され、日本国民大衆からも蔑視されていた植民地出身の朝鮮人をどう描いたかを鋭く考察している。

 小林多喜二については「朝鮮人をも差別なく平等に愛した、人道的倫理観の深い詩人であった」と指摘する。はたして宮沢賢治の評価はどうか。

 東北から複眼的な視点で東アジアの情勢や歴史を見ようとする意欲が伝わってくる良書。(歴史教育者協議会東北ブロック「編」)

[朝鮮新報 2004.8.25]