〈高句麗壁画古墳世界遺産登録〉 本格化する保存管理、環境整備、当面公開は専門家らに限定 |
【平壌発=李相英記者】6月28日から7月11日まで中国・蘇州で開かれた第28回ユネスコ世界遺産委員会で世界遺産に登録された朝鮮の「高句麗壁画古墳群」。登録された古墳は全63基。そのうち壁画古墳は16基にのぼる。朝鮮が世界に誇る高句麗壁画古墳群が人類共同の財産として国際的に認められたことを示す世界遺産登録は、高句麗の古都平壌でも大きな喜びをもって迎えられ、世界遺産にふさわしい環境の整備が今後、本格的に進められていく見通しだ。 生活風俗、いきいきと
現在まで約90基が発見、発掘された高句麗壁画古墳は、朝鮮半島から中国東北地方におよぶ広大な地域を支配し約1000年にわたり繁栄した高句麗の優れた文化を今に伝えている。 古墳壁画の傑作中の傑作と言われる四神図が描かれた江西大墓および中墓、叙情的な美しさあふれる女人図を持つ水山里壁画古墳、高句麗時代の生活風俗、文化、信仰を活写した徳興里壁画古墳、墓の大きさと描かれた壁画の豊富さによって高句麗最大の壁画古墳として名高い安岳3号壁画古墳などは、世界の壁画史上類を見ない華やかさと勇壮さに満ちている。 文化保存指導局傘下の研究機関である朝鮮文化保存社のリ・ギウン遺跡研究室長は、今回の世界遺産登録が持つ意義について、「わが国が進めてきた文化遺産保存管理政策の結実であり、私たちの先祖が創造した文化が世界的価値を持つものとして認められたことは、大変喜ばしいこと」だと語った。 リ室長はまた、今回の登録は単に高句麗文化に対する評価のみならず、「高句麗の歴史を過小評価し、あまつさえゆがめようとする昨今の動きに一石を投じ、北東アジアに『千年強国』として栄えた高句麗の歴史を民族史の中に正しく位置付け、統一時代の民族史を確立するうえでも、1つの大きな転換点となりうる画期的な成果」だと指摘した。 日本の高松塚やキトラ古墳の壁画には、海を越えて渡ってきた高句麗文化の影響が色濃く刻まれている。リ室長は「高句麗壁画の世界遺産登録は日本をはじめ北東アジアの人々にとっても喜ばしいこと。これをきっかけに文化をベースにした相互のつながりがより緊密になれば」と希望を語った。 頭悩ます保存と参観
世界遺産に登録されたことにより、壁画古墳の保存管理は朝鮮のみならず国際社会が一致して取り組む問題となる。 文化保存指導局のカン・ヨンミン局員は、「ユネスコとの協調関係はより緊密になる」と指摘し、朝鮮に対する技術および資金援助も行われるだろうと語った。これから壁画の保存管理とともに、各壁画古墳に関する解説設備および参観者の便宜を図るサービス施設の設置、周辺道路の整備などの環境整備を進める予定だ。 時の流れとともに風化していく壁画の保存には多くの困難が伴う。
現在、関係者の頭を最も悩ませている問題が、「壁画の保存と参観の両立」だ。現在開放されている8基の古墳内部の壁画はガラスで覆われ、温度と湿度を一定に保ち壁画の退色や剥離を防止するとともに、不活性化を図る措置が取られている。 最新保存技術の研究と導入も全力で進められているが、「充分な設備が整っていない目下の状況では、壁画古墳の全面的公開および参観は難しい」(関係者)という。当面は専門家のほかに外国人、海外同胞の中で特に興味を持つ人に限り有料での参観を許可する方向だ。 古墳を密閉してしまうことが最も効果的な保存方法だが、「高句麗壁画の魅力を多くの人に知ってもらうためにも、保存管理体制が万全に整い次第、参観の要望に答えていきたい」(リ・ギウン室長)。 金剛山なども申請 一方、今回の登録を機に他の文化遺産の世界遺産登録へ向けた動きにも弾みがつくことが期待されている。 文化保存指導局は既に開城市および平壌市周辺の文化遺産、金剛山など6カ所を対象とした申請リストをユネスコに提出している。 また、平壌では高句麗壁画古墳保存センターの建設が進んでいる。関係者によると6月15日に着工した保存センターの建設には、平山郁夫・東京芸術大学学長が20万ドルの援助を行い、朝鮮側は当初の計画を拡張、投資額も増やすという。 センターは壁画古墳に関する学術研究、保存技術の研究、専門家の養成、対外宣伝活動を行う総合的な高句麗壁画古墳研究施設として、来年末までの完工を予定している。 [朝鮮新報 2004.8.31] |