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〈本の紹介〉 「在日&在外コリアン」

 「世の中には、いろいろな人がいるもんだ」。本書を読み終えた後に、まず、思ったことである。老若男女、肌の色を問わず、一生懸命、何かを求めてひたむきに生きる人たち。

 本書に登場する人たちは、在日朝鮮人と在外コリアンたちである。異郷暮らしは決して生易しいものではない。1世ばかりの苦労がよく取り上げられるが、民族排外主義がばっこする日本社会にあって、その差別の壁をこじあけるのは、2、3世にとっても容易なことではない。しかし、本書に取り上げられた人たちは、差別や貧しさをものともせず、恵まれた才能を生かしながら、たくましく運命を切り開いていった。その力強い歩み、前向きな姿勢は何とも魅力的。

 差別さえ、バイタリティーに代え、民族のアイデンティティーを鮮明に打ち出し、国境を軽々と越えて、周囲を味方につけながら、仕事をなしとげている。

 例えば、ここに紹介されている金信男大阪朝鮮高級学校ラグビー部監督の「不可能を可能にしよう」という言葉は何と重い響きを持っているのだろう。何度も何度も締め出された高体連の厚い壁。それを破って出場権を獲得したものの、高いレベルの大阪代表になるのは至難の技だった。

 その奇跡をもたらした2003年の初の全国大会出場の快挙。その奇跡の源こそ金監督の選手たちに言い続けた「不可能を可能にしよう」の言葉だったのだ。本書にはこのようなきらめく言葉が随所に刻まれていて、心を動かされる。何事かをなしえた人だけが人生の旬に発する一瞬の言葉。それをとらえた筆者のペンの力に敬意を表したい。(高賛侑著)(粉)

[朝鮮新報 2004.9.6]