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〈誌〉 再び銃後となってしまった国で−2004年−

めぐってくる八月
今年も青い海にヨットが走り
ヒマワリが陽とともにまわる

でも今この国は
再び銃後となってしまった国

ヒノマルの小旗を振るひとびとに送られ
星条旗のために
自衛隊は劣化ウラン埋まる砂漠の地に出動していった
軍艦マーチに送られ
自衛艦は子どもたちの悲鳴が流れる
アラブの海に出動していった

そうこの国は再び銃後となってしまった国
自衛隊官舎のポストに反戦ビラを入れただけで
ひとびとは捕らわれ長く長く勾留され
アラブの子どもたちのために
やさしく尽くしつづけた娘が
「反日分子」だと指弾される

そうこの国は再び銃後となってしまった国
情報は操作され
中傷はあふれ
憲法九条は思い切り嘲られ
アジアへの侵略の歴史は
きれいさっぱりなかったかのよう

でも再び銃後となってしまった列島の
あちこちに
さまざまなスタイル さまざまな工夫で
平和のバラを植えつづける人びとがいる

たとえば君が代が鳴っても
大地に根を下ろしたように席を立たない教師たち
熱い浜辺にすわりこみ
ジュゴンの海を守ろうとする辺野古のおばあたち

大日本帝国にらちされ非業に死んでいった
アジアの犠牲者を悼んで
動きつづけるひとびとがあり
忙しい仕事の合間に
イラク派兵反対のメールを政府に送る娘たちがいる

やさしい心は重なり
強い意志の固まりとなって
列島のあちこちから噴き出し
死の商人たちをあわてさせ怖れさせるだろう

再び銃後となってしまった国を
銃後でない国に変えたい
それぞれがほんの一輪
そっと互いに合図しながら
それぞれのやりかたで
列島のあちこちに平和のバラ咲かせたい

(石川逸子)

[朝鮮新報 2004.9.21]