〈みんなの健康Q&A〉 夏バテ−原因と対策 |
Q:今年の夏は異常に暑くて、体調をこわした人が多かったようですね。 A:昔は空調設備が不十分で、暑さと湿気のために食欲が落ちて体重が減り、だるさで気力も出ないという典型的な夏バテにおちいった人をよくみかけました。ところが、最近は、冷房病という言葉もあるように、冷房のきいた室内と猛暑の外とを行ったり来たりする結果、だるさや集中力の低下、胃腸障害、さらには神経痛や生理不順が引き起こされています。時には頭痛や肌荒れなどとともに、夏かぜがなかなかぬけないといった不調をきたすこともあるようです。 Q:皮肉な状況ですね。では、夏バテが生ずる原因はいったい何なのでしょうか。 A:私たちの体は、自律神経の働きによって、昼間は活動的になり、夜間は安らぐように調整されています。こういう日内変動に加え、気候の変化に順応し体感温度を調節するような機能が備わっています。ところが空調設備の普及で年間を通して適温になっているため、季節変動に応ずる体内時計の感覚が鈍ってしまうのです。 次に重要な原因は食欲不振です。温度と湿度が高くなると胃酸の分泌が低下し、食欲がなくなってしまいます。こんな時に水分や冷たい物を摂り過ぎると胃酸を薄めてしまい、温度差の影響もあって、せっかくとった食事がうまく消化されず、十分に吸収できなくなり体力が落ちてしまいます。ついつい偏食しがちになるうえに、食事の量や回数が減るので、一日に必要な栄養素が不足してしまいます。 3番目に重要な原因は暑さ(熱帯夜)による睡眠不足です。熟睡できず、翌朝に疲れが残ったまま出勤、登校という人もいるでしょう。これが毎日繰り返される間に疲労が蓄積していきます。 Q:夏の服装について、どういう点に気をつければいいでしょうか。 A:まず下着は汗を吸収しやすいものにして、こまめに取り替えましょう。胸の谷間や首、背中のくぼみは、暑さに敏感なわりに汗が蒸発しにくいところで、ここの風通しが良いことが涼しい衣服の条件です。 ところで、日中外にいる時は太陽の直射熱を反射する白い服が体温の上昇を防ぎますが、室内では逆に体から熱を吸収し外へ逃がしてくれる黒っぽい服が涼しく感じられます。強い陽射しには帽子が欠かせません。 Q:入浴時に心がけるべきことはどんなことですか。 A:適度の発汗を促し代謝をよくするために、ぬるめのお湯(40度以下)に短時間(15分内)つかるという方法が推奨されます。 Q:寝苦しい夜を乗り切る方法を教えてください。 A:冷房や扇風機をつけっぱなしにして眠ってしまうと、翌日だるさや筋肉痛を覚えるという方が少なくありません。昼間でも最小限不快に感じない程度に冷房を使用すべきで、外気温との差が5度以内になるよう温度を設定することをすすめます。夜間はあまり低温に設定しなくても、除湿機能だけで十分涼しくなります。空調の風向きをうまく工夫して空気の流れを自然なものにするのもよいでしょう。ところで、寝てもおきても同じ格好では神経が休まりませんので、眠る時は、きちんと寝巻きに着替えて下さい。寝巻きは綿などの素材で、下半身の通気性がよいものが最適です。 Q:どうしても冷たい飲み物に手が行きがちですが、飲食についての注意点をお話し下さい。 A:喉のかわきをいやそうと、冷えた清涼飲料水などに手が伸びてしまいがちですが、むしろ逆効果となることがあります。飲んだ直後はさっぱりしますが、暑さで弱っている胃腸によけいな負担をかけてしまい、夏バテによる食欲不振をより悪化させます。むしろ、ハーブなどの香りを効かせた温かい飲み物をすすめます。ビールは食欲増進に効果がありますが、アルコール飲料ですから、飲みすぎると後で必ず喉がかわいてきます。 Q:この時期の食事はどんなものがよいでしょうか。 A:体力の消耗が激しい時期なので、食事が不十分だと、蛋白質、ミネラル、ビタミンなどが不足してきます。何より大切なのは、しっかり朝食をとり、1日3食きちんと食べることです。このことが生活のリズムを作り出して、夏バテ予防につながります。 基本的食材として、みょうが、セロリ、レタス、ナス、トマト、きゅうりなどの野菜類、すいか、キーウィ、レモンなどの果物、それに貝類がおすすめです。 ビタミンB1は夏場にはとくに不足しやすく、これが足らないと疲れやすくなり、食欲が減退します。そのため、レバー、うなぎ、枝豆、豆腐、胚芽米、ごま、ニンニクなどビタミンB1の豊富な食材、食品を使うように心がけることが望まれます。 食欲増進には香辛料を上手に使い、酢やレモンなどを利用するのもよいと思います。(金秀樹、あさひ病院院長、東京都足立区平野1−2−3、TEL 03・5242・5800) [朝鮮新報 2004.9.24] |