〈みんなの健康Q&A〉 下痢−原因と対策 |
Q:あぶらっこい食べ物や冷たい飲み物を摂りすぎたり、カゼをひいた時、ストレスとか緊張した時に、よくおなかが下ると悩んでいる人がいます。 A:つまり下痢をするわけですね。便の水分量が増加して(80%以上)、液状またはそれに近い状態にあるものを下痢と定義します。1日に消化管に流入する水分量は、摂取量と分泌される消化液をあわせて10リットルにも上ります。そのうち8リットル以上が小腸で吸収され、盲腸には1.5〜2リットルが流入し、最終的に糞便として0.1リットル排泄されます。これら水分の吸収が不十分であると下痢が生じます。 Q:下痢の原因にはどのようなものがありますか。 A:いろいろな疾患で下痢は起こりますが、その原因として3つに分類されます。 1番目が水分吸収障害です。これには、分解酵素の欠損のため牛乳や茸によって下痢が起こる場合や、小腸切除による吸収面積の減少などが該当します。 2番目の原因として、腸液などの水分分泌増加があげられます。この代表的なものは、コレラ・病原性大腸菌などによる感染性腸炎とウィルス感染によるものです。その他、特殊な炎症性腸疾患や赤痢などによる消化管粘膜障害、慢性膵炎、あるいは下剤の効きすぎもこの中に含まれます。 3番目に消化管の運動異常があります。運動の亢進をもたらすものとして、下剤、感染性腸炎、過敏性腸症候群があります。逆に運動の低下を引き起こすものとして、糖尿病による胃腸機能障害が有名です。また、ストレスや自律神経失調症はこの運動異常をもたらす原因と考えてもいいでしょう。海苔のような黒っぽいどろどろした便が出たら、胃や十二指腸の潰瘍から出血している可能性が高いので、すぐに病院に行くこと。 原因はともかく、ダイエット甘味料や抗生物質の濫用で重篤な下痢を生ずることがあるので気をつけましょう。 Q:治療するといっても、その原因を知らなければできませんね。 A:その通りです。 ところで、そもそも下痢というのは有害物質を排除するために行う生体の自己防御機構であることを知っていますか。つまり、下痢をしているということは腸内をきれいにしているのであり、自らすでに治療をしているのです。それゆえ、単に排便を止めることを主眼にして治療を行うべきではありません。まず大切なことは下痢の原因を調べなければなりませんが、これには医師による診察と検査が必要です。 Q:よくわかりました。でも、日常的にはたいそうな病気からくるものは少ないように思うのですが。 A:そうですね。俗にいう胃腸カゼや食べ合わせが悪かった場合、食生活の不摂生などで下痢をする人がほとんどでしょう。何も口にせずにおとなしくしているのが一番の治療法なんですけど、実際はそう長くがまんできるものではないでしょう。 Q:身近なもので何か効果のあるものはないですか。 A:これといったものはないですね。薬草のゲンノショウコを煎じた汁やザクロの実と果皮に下痢止め効果があります。 Q:薬にはどのようなものがありますか。 A:一般に止痢薬・整腸薬といわれるものにはたくさんの種類があります。 よく処方される腸粘膜刺激緩和薬には、腸液分泌を抑制するものと下痢の誘因となる腸内の細菌性毒素、腐敗発酵物、ガス、過剰な水分、粘液などを吸着、排出するものとがあります。腸運動抑制薬は腹痛を伴ったり、他剤無効の激しい下痢によく用いられます。この中に含まれる薬のうち、細菌性下痢において強力に腸管蠕動運動を抑制するため、逆に感染を長期化させるものがあるので注意が必要です。3番目に殺菌防腐薬があります。これらは、感染性の下痢に対して殺菌作用を持つとともに、腸内腐敗や異常発酵を抑えます。 整腸薬では、乳酸菌製剤などの生菌製剤がよく知られていますが、ビフィズス菌とか耐性乳酸菌製剤などがあり、ふつう止痢薬と併用されることが多いです。 Q:下痢が長いこと続くとどうなりますか。 A:薬を飲んだり気をつけて飲食しても、なかなか下痢が止まらないことがしばしばあります。そうなると、体力が消耗し、ふらふらになる人もいます。我慢せず病院へ行って、適切な治療を受けなければなりません。とくに高齢者や乳幼児では容易に脱水や栄養障害が引き起こされますから、点滴を受けたり、場合によっては入院して全身管理が必要となります。(金秀樹、あさひ病院院長、東京都足立区平野1−2−3、TEL 03・5242・5800) [朝鮮新報 2004.10.15] |