〈みんなの健康Q&A〉 便秘−種類と対処法 |
Q:一見して健康そうな人でも、けっこう便秘で悩んでいることがよくありますね。 A:若い方でも時には下剤を服用している場合があるようです。 Q:排便が何日もないとか、便が硬いとか、いろいろあるようですが。 A:大便が長い間腸管にとどまり、水分が減少して硬くなり、排便に困難を伴う状態が便秘です。排便回数が減少し、週に2〜3回しか排便がなくなります。 ただし、排便習慣には個人差がありますから、たとえ排便が2〜3日に1回でも、とくに苦痛がなく、規則正しければ病的とはいえないので、気にすることはありません。 Q:原因は何なんでしょうか。 A:便秘はその原因により、2次性と特発性に分類されます。2次性便秘は、もともと基礎疾患があって生じるものと、薬剤性のものとがあります。基礎疾患として、代謝・内分泌性疾患、神経・筋原性疾患、あるいは癌などによる器質的障害があげられます。 特発性便秘は腸機能異常による便秘で、だいたい2つに分類されます。ひとつは弛緩性便秘と呼ばれる病態で、腸管運動の低下による通過時間の延長が認められます。もうひとつは痙攣性便秘で、腸の一部の緊張が高すぎて、内容物の移動が妨げられることにより便秘をきたします。この2つ以外に、直腸の粘膜知覚の低下による便秘もあります。これらによる便秘の特徴は、排便間隔の乱れ、それに慢性の常習性便秘です。 Q:食生活や年齢によっても便秘のしやすさは関係ありますか。 A:大いにあります。近年、高齢化や食生活の欧米化などにより便秘は増加していると考えてよいでしょう。食物繊維の豊富な食品摂取が少ないと便秘になりやすいことは、みなさんよくご存知のことと思います。 Q:ふだんの食生活で心がけねばならない点を教えてください。 A:先ほど述べた食物繊維というのは、簡単に言えば胃腸で消化されない成分と理解してもらえばいいのですが、これが多いとそれだけ便が作られやすくなります。いちばん有名なのはグルコマンナンという食物繊維で、こんにゃくの 肉類中心で、野菜不足の食生活は最もよくないパターンです。 Q:一般的な治療法について教えてください。 A:原因疾患があって便秘を生じている場合は、下剤投与よりも原因疾患の治療が第一であることは言うまでもありません。診断に際しては、食生活が不適切でないか、便秘を引き起こしそうな薬を服用していないか、まず知る必要があります。検査としては、便の潜血反応、直腸指診、バリウムによる大腸造影、大腸内視鏡などがあります。 機能性便秘に対しては、不快感や苦痛を伴う場合に限り下剤が投与されます。 Q:下剤にもいろいろあると聞きましたが。 A:飲む薬剤としては、腸管内の水分増加と容量増加による刺激で蠕動を亢進させて排便を促す「機械的下剤」と、腸管粘膜あるいは神経を直接刺激して蠕動を亢進させ腸内の水分吸収を抑制する「刺激性下剤」の2種類が主要なものです。前者ではマグネシウム製剤がよく使われます。後者ではヒマシ油や漢方・植物成分剤、直腸内に挿入する坐薬がよく知られています。これら下剤は習慣性を生じることがあり、一方では長期的に使ううちに効き目が落ちてきます。 浣腸剤はグリセリン浣腸液が汎用されており、弛緩性、直腸性便秘によく効きます。家庭では薬用石鹸液で代用できますよ。浣腸剤といえどもやはり習慣性のため効果がだんだん弱くなり、さらには腹圧減弱により排便困難がむしろ悪化するという皮肉な状況になりがちです。また、妊婦には使用できません。 Q:やたらと薬をだらだら長く使ってもよくないということですね。 A:そういうことです。下剤使用に際しては、それぞれの作用機序と禁忌を理解し、乱用はつつしまなければなりません。できれば医師とよく相談した上で薬剤を使用すべきです。 Q:下剤を減量のために飲んでいる人がいますが、効果はあるのでしょうか。 A:減量の基本は余分な体脂肪を燃やし減らすことです。下剤で排便の分だけその場しのぎに体重が減ったからといって、体脂肪の減少に直接つながってはいません。むしろ食欲が増して、体重増加の原因になることがあるので、あまりすすめられる方法ではありません。(金秀樹、あさひ病院院長、東京都足立区平野1−2−3、TEL 03・5242・5800) [朝鮮新報 2004.11.5] |