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〈本の紹介〉 教科書から消される「戦争」

 今、日本では侵略を肯定する政治家らの発言が繰り返され、拉致騒動と相まって、日本人の中にある朝鮮への蔑視観、敵視はさらに増幅されつつある。

 この問題の背景は、実に根深い。約、1世紀程前、明治政府は、神功皇后の「三韓征伐」の伝説と豊臣秀吉の「朝鮮征伐」の論理を結びつけて、朝鮮侵略政策を実行していった。  明治になってすぐ神功皇后は、紙幣の肖像に取り上げられた。明治政府は日本が、神の子孫=天皇の統治する国であるという記紀の神話を「事実」として「国史」の教育を行い、国民をまとめていった。この時期に日本人の中に「朝鮮は日本の属国だった」という朝鮮観が形成され、朝鮮・アジア侵略思想が深く根を下ろしていった。

 19世紀後半から20世紀前半にかけての日清、日露戦争、朝鮮併合、第2次世界大戦を通じて、「大日本帝国」が台湾、南樺太、朝鮮半島を植民地にし、「満州」にまで侵略していった背景には、こうした「大和民族」の優越意識がある。長い歴史と独自な文化を持つアイヌや琉球、さらに植民地とした台湾、朝鮮民族の固有の言語を否定して日本語の使用を強制し、創氏改名までさせて、「皇民化」を徹底させた蛮行は、世界史でも類例を見ない。

 そのような歪んだ歴史をすべて動員して国民を教育した結果、6000余人にものぼる関東大震災の朝鮮人虐殺が引き起こされたのである。

 本書は、現在の日本の状況を探る上で、非常にタイムリーな時期の刊行となった。日本国内では近代日本の立役者として、高く評価されている大隈重信(第一次大戦遂行と対中国「21カ条」要求の立役者)、大久保利通(海外派兵への道を拓き、琉球処分した独裁者)、陸奥宗光(アジアを激怒させた高圧的外交官)など多くの明治の「元勲」を取り上げて、いまの教科書問題を深く掘り下げている。日本の朝鮮侵略の歴史が消されようとしているこの状況下で、メディアが何の反省もなく、朝鮮半島の歪んだ情報を垂れ流すのはなぜなのか。本書はその背景をわかりやすく解説している。(株式会社金曜日)(朴日粉記者)

[朝鮮新報 2004.11.15]