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〈みんなの健康Q&A〉 慢性肝炎(上)−新しい治療法

 Q:慢性肝炎とはどんな病気でしょうか?

 A:慢性肝炎とは、持続する炎症のため肝細胞がこわれ続け、他方では細胞が壊れた場所で新しい肝細胞が増える一方、傷のすき間をうめるように線維化がすすむため、本来の肝組織の骨組みが変わり、やがては肝細胞が減ったあげく肝臓全体が硬くなり、肝硬変を呈する病気です。原因は肝炎ウイルスの感染や患者さん自身の免疫の異常、薬剤の長期間の使用などがあげられます。ここでは、最も身近な、肝炎ウイルスの感染による慢性肝炎について記すことにします。同胞諸兄姉の多くは、肝炎持ちのいかんに関わらず、C型肝炎、B型肝炎という病名をお耳にしたことがあると思います。これらの肝炎は何れもC型やB型肝炎ウイルスの感染のため肝炎が発病し、15〜30年をかけて、慢性肝疾患の終着駅といえる肝硬変にたどり着くことが知られています。図1にC型慢性肝炎の病状の経過を示します。肝炎が進むに従いに肝癌の発生率が上昇し、硬変になれば年7〜8%の発癌率となります。軽度の肝炎から次第に重症化し肝硬変に進む点はB型肝炎も同様で、発癌率はC型の2分の1ほどであることが知られています。

 Q:慢性肝炎の症状を教えてください。

 A:ほとんどの患者さんでは、自覚症状はないか、あっても軽い倦怠感程度ですので、健康な方が感じる日常の疲れと区別することは難しいと思います。また、患者さんの多くは発病後も通常の生活を送ることができるため、病院に通い治療を受ける必要を感じる方は少ないと考えられます。

 Q:それではどのように診断され通院することになるのでしょうか?

 A:検診などで血液検査を受けることによってAST(GOT)・ALT(GPT)上昇などの肝機能障害がみつかり、エコー検査等で肝臓の形を調べるとそれなりの変化が既に生じていることが分かります。また、肝機能異常があればC型、B型肝炎ウイルスの感染を調べる血液検査を続けて行います。これくらいの検査によって慢性肝炎であることが判明し、最長30年ほど先に自分の病気がどうなっていくのかが概ね分かることになります。本来症状が乏しい病気であることを知らないため、血液検査で異常を指摘されても無症状であることを口実により詳しい検査を受けず、早期診断のきっかけを失うことがあってはなりません。いささかの体調不良を日々の大酒飲みのせいにして病院に足を運ぶことをためらうことが常である諸兄姉にはこの点を強調したいと思います。

 Q:慢性肝炎と分かった後の治療について教えて下さい。

 A:まずはC型慢性肝炎の治療からお話しましょう(図2)。C型慢性肝炎治療の進歩は目を見張るものがあります。これを読む同胞諸兄姉の中にはC型肝炎の治療というと、副作用の多いインターフェロンの注射をうけて結局治らなかったことを昨日のことのように思い出す方がいるに違いありません。13年前に一般診療に導入されたインターフェロン治療は、副作用の辛さにくわえ効果の不確かさにより、副作用に耐えられないための治療中断や治療無効例をたくさん生み出したのは事実です。これらの患者さん達には、今、肝硬変と肝癌の波が押し寄せていることを考え合わせると、不評には道理があります。しかしながら、この間に慢性肝炎に関する研究がそれなりに進んできたことも事実なのです。現在はC型肝炎患者さんの血液中のウイルスを調べるだけで、インターフェロンが良く効くかどうかが予想できます。例えば、血清型が2型の患者さんや、1型でウイルス量が少ない患者さんでは新しいインターフェロンであるペグインターフェロンを週に一度、24ないし48週間投与すれば70%以上でウイルス駆除が可能になりました。さらに、最も治療が難しい血清型1型でウイルス量が多い(血清1cc中に浮いているウイルスが10万個以上)患者さんでは、今年の12月中旬から使用可能となる新しい別のインターフェロンと内服薬(リバビリン)で治療することによって、50%前後のウイルス駆除率が期待されています。ひとたび肝臓からウイルスが駆除されれば、肝炎は落ち着き、肝臓の硬さもとれ、もう肝硬変へ進行することはありません。そのうえ、肝癌の発生も激減することが分かっています。つまり、C型慢性肝炎は最近になってようやく「治る病気」になってきたのです。(姜貞憲先生、手稲渓仁会病院消火器病センター、札幌市手稲区前田1条12丁目、TEL 011・681・8111)

[朝鮮新報 2004.11.26]