林権澤監督「酔画仙」上映へ 「伝説の天才画家・張承業」 |
激動の19世紀の朝鮮時代末期、数奇な運命を経て、宮廷画家にのぼりつめた天才画家・張承業(1843〜1897)。 朝鮮民主主義人民共和国で発行されている「朝鮮歴代美術家便覧」(99年版)によっても、「18世紀のわが国のリアリズム風景画、風俗画を継承し、19世紀リアリズム花鳥椁ム図の発展のより高い見地に到達するうえで、多大な寄与をした優秀な作品を生み出した」と高く評価されている。
張承業は19世紀朝鮮時代末期に、筆一本で宮廷画家にまでのぼりつめた実在の人物。 張承業が生まれた時代は、幼い国王が続き、王の外戚が実権を握る「勢道政治」が行われたため、政権の私物化が進み、政治機構は腐敗していた。 支配階級である両班は不毛な党争を繰り返すばかりで、民衆の生活は困窮していた。そして、この時期、米、仏、英などがかねてから朝鮮侵略の機会を伺い、日本も軍事的な脅迫を強めていた。 こんな激動の時代にあって、張承業は貧しい家に生まれ育ち、教育も十分に受けることができなかったが、ソウルの通訳官、李応憲のもとに寄食して中国の名家の書画に触れ、さまざまな画風に通じるようになった。当時の詩、書、画一致の境地を尊んだ教養ある文人画家たちに反旗を翻し、新しい創造的な冒険と実験を続けた。彼は現実に満足せず、常に新しいものを探し続ける創造的な画家であった。おそらく宮廷にばっこしていた権威主義に対する彼の劣等感が反抗心をあおり立てたことは容易に想像できよう。彼の芸術家の原動力こそ逆境を経て、培われた反骨精神であろう。
12月18日から東京・神保町の岩波ホールで始まる「酔画仙」は、韓国映画で最初のカンヌ国際映画祭監督賞に輝いた巨匠林権澤監督の渾身の一作である。 伝説の天才画家として「酒と女なしでは絵が描けなかった放蕩者」などの記録のみが残り、謎に包まれている張承業。その生涯を林監督は東洋画の美しさを随所に折りまぜながら、重厚な作品に仕上げた。同監督の作品として00年の南北首脳会談の席上で話題となった「春香伝」とパンソリの素晴らしさを世界に伝えた「風の丘を越えて〜西便制」などと共に、反響を呼ぶことになろう。(粉) [朝鮮新報 2004.12.1] |