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東京女性文化教室でポジャギ作りを体験

 今、同胞女性の間でひそかなブームとなっている「ポジャギ」作りを体験すべく、11月18日、東京都文京区の朝鮮会館を訪れた。

 在日本朝鮮民主女性同盟東京都本部主催の「東京女性文化教室〈ポジャギ〉」。会場には、チョガッポや人形など、講師の李玉禮さん(76)と受講生らの手作り作品が飾られていた。

李玉禮さんを講師に

作り方を丁寧に説明する李さん

 机の上には針と針山、糸、ハサミ。会場には10代から60代まで約30人の女性たちが集まった。

 順々に「手作りキット」が配られ、中身を確認する。袋の中には長方形や正方形のモシ(苧麻)が数枚と台紙が1枚。その一つひとつに丁寧に番号がふられている。

 18歳まで故郷・全羅南道求禮郡で過ごした李さんは、自身の体験から在日の若い世代に民族の誇りと文化を伝えようと、各地で同胞女性を対象にポジャギ教室を開き、今年から東京の朝鮮大学校短期学部で女子学生たちを対象に特別講義を行っている。また、朝鮮への理解を深めてもらおうと、NHK文化センターで、多くの同胞、日本人にポジャギ作りを教えている。

 この日は、朝鮮の伝統的な縫い方である「カムチムヂル(巻きかがり)」を使ってのチョガッポ作りに取り組んだ。「カムチムヂル」は、ポジャギの最も特徴的な縫い方で、その他にも「ホムチル(ぐし縫い)」などがある。

 はじめに、はぎ合わせる部分の縫い代(1.2センチ)を折り、縫い代の山を中表に合わせて仮縫いをして固定する。右側奥から手前に向かって針を通し、折り山から下の位置、間隔は2〜3ミリを目安に絎けていく…。

 説明を聞き、その通りにしようとするものの、縫い代を折った時点で頭の上にはいくつもの「?」マークが浮かんだ。早くも隣の人と顔を見合わせ、「わからない…」と苦笑い。参加者たちの様子を見ながら李さんは、ゆっくりと丁寧に、布に対して針は直角、縫った糸は斜めに出るように…と、手を取り教えてくれる。「間隔を同じにしないと仕上がりがでこぼこの子どもの歯並びみたいになるから、2ミリなら2ミリの間隔を保ってね」。気が遠くなるような細かな作業に、思わずはぁ…とため息が出る。

女性の涙の文化

 解放直前まで朝鮮で暮らしていた李さんは、朝鮮での暮らしをしっかりと覚えている。

 「皆さんの裁縫箱にはふたがあるでしょ。でも、昔の貧しい朝鮮の女性たちの裁縫箱にはふたがなかった。ざるのようなものに道具を入れて、糸は台を立ててそこへたらして…」

会場に飾られた作品の数々

 結婚生活の中で辛いことがあると、女性たちは針仕事の途中に、そのざるに顔をうずめて泣いたそうだ。針仕事という女性の文化には「女性の涙が込められている」と李さんは話す。「ポジャギは母から娘へ、娘からそのまた娘へ、嫁入り道具を包む物として贈られた。皆さんも娘や親しい友人にプレゼントしてみてはいかがですか」

 母親からも聞いたことのない、李さんの話に知らずと引き込まれていく。

 「昔、朝鮮では人が死ぬと、3日間、村では喪家を手伝う風習があった。喪主は弔問客に深々とお辞儀をするが、妻が夫より先に亡くなった場合、夫は弔問客に対して絶対頭を下げなかった。封建社会とはそういうもの。女性は徹底的に人間として扱われなかった」

 幼い頃から子守り、畑仕事、機織りや女中奉公に精を出し、嫁いでは厳しい姑の下で野良仕事や針仕事に明け暮れた朝鮮女性たちの暮らし。

 一針一針時間をかけて、布地を縫う間に、時空を超えて、李さんの話の中から長い忍従の暮らしの中で民族の香りあふれる文化を創造してきた女たちの姿が浮き彫りになってきた。

 結局3時間という時間内に、ついには完成できなかったけれど、なんだか自分としてはずいぶん縫い方が上達したように思えてきた。中途半端な作品を李さんに見せると、「初めての割にはうまくできた。若い人は覚えが早いから」と褒められた。

 参加者たちは、「ポジャギ作りははじめて。作っているところを直接見たことがなかったのでとても勉強になった。麻も朝鮮らしい感じがしてとても良い。色彩を代えていろいろ作ってみたい」(金英子さん、67)、「針仕事はほつれたところを直す程度であまりしたことがなかったので、思ったより難しかった。李先生の話は、学校の授業や家では聞けない慰安婦の話などの衝撃的話だったのですごく勉強になった」(高順美さん、18)などと話していた。

 翌19日にも行われた教室には、2日間で延べ70人が参加した。(金潤順記者)

[朝鮮新報 2004.12.6]